倉敷市内の公園で毎月1回開かれる「楽しく繋がるごみ拾いプロジェクト」。主催はペットの飼い主をサポートするグループ「ペット相談の町〜むすび〜」とビーントゥバーのチョコレートメーカー「SUNCACAO(サンカカオ)」です。
倉敷で人気のチョコレートメーカーと、ペットの飼い主サポーターとの意外な共通点とは? その秘密を主催者に聞きました。
毎月実施される「ごみ拾いプロジェクト」
2021年6月から始まったこの活動。最初は数人の集まりでしたが、人づてに参加者が増え、現在は30人近い人たちが毎回参加し、地域の美化活動に貢献しています。
この活動は、倉敷市の「アダプト・プログラム」という制度を利用しています。アダプト・プログラムとは、公共の場所を清掃するボランティア団体に対して、ごみ袋や軍手などを行政が支援するという制度です。
参加者は、愛犬・愛猫家だけではなく、ペットを飼ってみたい親子、SUNCACAOの常連客、環境保護に関心がある人など。ゆるやかな雰囲気で、初参加の人にも声を掛け合いながら和気あいあいと活動しています。
気候の良い時期は、活動の場を海岸へ移し、清掃活動を実施。海岸には食品のパッケージやレジ袋、ペットボトルといった生活ごみだけではなく、古タイヤやオーブントースターといった不燃ごみも不法投棄されていたそう。砂の中からは、大きなシャチの浮き輪まで出てきました。
「いつも楽しい雰囲気で活動しています。参加した子どもたちも『これは燃えるゴミ』、『これは燃えないゴミ』と考えながら一生懸命に拾ってくれました。毎回飼い主と参加してくれる看板犬のジャックくんはみんなの人気者です。大きな浮き輪を飼い主さんたちが掘り出すのを横から応援していて微笑ましかったです」と、むすびのスタッフ・小崎由美子さんは話します。
“ごみを減らしたい”という考えに共鳴
活動のきっかけは、ごみを拾って食べてしまうダックスフンドの飼い主の悩みから。「てんかん持ちだったので、ごみを誤って食べてしまうと命取り。安心して散歩ができない」という悩みを聞いた小崎さんが、有志に呼び掛けて、公園のごみ拾いを始めました。
「ペット相談の町〜むすび〜」は、代表の中塚真美子さんと小崎さんの2人を中心に活動しています。犬や猫の保護活動ボランティアを通じて、捨てられるペットが減らない実態を目の当たりにした2人は、保護犬・猫を減らすためには、飼い主へのサポートが不可欠という考えに至りました。
気軽に悩みを相談できる飼い主同士の居場所作りや情報提供のための新聞発行、お茶会などを実施。ごみ拾いプロジェクトもその一環で、飼い主同士がつながりを持てる場になればという思いも込められています。
この思いに共鳴したのが、ごみをなるべく出さない“ゼロウェイスト”を目標に掲げるSUNCACAOでした。
SUNCACAOは、京都の有名チョコレートメーカーで修行した加藤泰さんと純代さん夫妻が始めたチョコレートブランドです。水島IC近くにある工房兼店舗でカカオ豆を焙煎し、チョコレート加工までを自分たちで一貫して行っています。余計なものは入れずに、主にガーナ産カカオ豆ときび砂糖のみで作るチョコレートは、素朴で優しい味わいと人気です。
2021年2月、加藤さん夫妻は、それまでのイベント出店から店舗を構えるタイミングで「SUNNY PANTRY(サニーパントリー)」という量り売りの店もオープンしました。
「一人一人が商品を買うと、パッケージなどたくさんのごみが出てしまいます。私たちが一括して仕入れたものをみんなで分ければ、ごみの量は減るし、価格も割安になります。子どもさんもおこづかいの予算に合わせて、楽しみながら量って買ってくれますよ」と純代さんは話します。
ごみ拾い後の楽しい企画 フードシェアも
「ごみ拾いプロジェクト」には、活動後の楽しみもあります。倉敷市社会福祉協議会に寄せられた、余ってしまった食料品や日用品、ペット用品を分け合う「くらしき互近助(ごきんじょ)パントリー」と、SUNCACAOの製造過程で出た食品ロスを分け合うという企画です。
「ごみ拾いの日はみなさんに容器を持参してもらいます。割れてしまったり不揃いなクッキーや試作品などの食品ロスを参加者の方においしく食べていただくためです」と純代さん。
「ペットを飼ってる飼っていないに関わらず、ごみ拾いプロジェクトを通じて、活動の輪が広がり、動物や環境保護を大切に考えるコミュニティができていることが嬉しいですね。互近助パントリーは、困っている方にもぜひ利用していただきたいです」と小崎さんは話します。
ごみ拾いプロジェクトから始まった小さなコミュニティ。人も動物も安心して暮らせる街づくりに大きく貢献しているようです。