『37歳の男、11ヶ月の育休を取る』というキャッチーなコピーで、育休を取るに至る動機から、育休中の日常や持論をクリエイター向けサイトのnoteに投稿しているぢぇぃさんは、5歳の長女と3歳の長男の父です。
取材をお願いした筆者に対し、「くれぐれも育休中の僕だけが、えらい、すごい、キラキラしているという風には書かないで欲しいんです。まったくそうではないので」と念を押すぢぇぃさんに、育休中のリアルな体感について話を聞きました。
家事には2種類ある
家事には2種類あるというのがぢぇぃさんの持論です。それが、妻の「こーうつ」さんの家事を観察したり、ぢぇぃさん自身が実体験から見出したりした、『派手家事』『地味家事』理論です。ぢぇぃさんが公開するnoteから引用します。
派手家事【 はで・かじ 】
[名]はで・かじ《「破手(はで)家事」から転じた語とも 》
1 頻度が高く、負担感の認知度も高いために、人々の注目を集める家庭内のいろいろな仕事。
2 第三次産業化および機械化の進んだものが多い。夏休み中のお手伝い項目として挙げられるような有名な家事。(ごはん作り・風呂洗い・洗濯など)
地味家事【 じみ・かじ 】
[名]じみ・かじ《「ぢみ・かじ」とも 》
1 内容にはなやかさがなく、目立たない家庭内のいろいろな仕事。
2 頻度が低く、負担感も低いためにパートナーに頼むまでもないと思える家事。というか、家事と認識されていないような名もなき家事。
「育児中のお母さんは『派手家事』だけでとても忙しい。だから、男は『地味家事』の部分をサポートすべきだと感じています」
「名もなき家事(地味家事)」とは、「ウラ返った服をなおす」「なわとび代をおつり無く用意する」などの、つい見落としがちな、いわばミニ家事。しかし、日常を円滑に進め、母親のストレスを少しでも軽減させるための重要な家事です。このような地味家事のサポートが、育児中の母親の派手家事を支えることに貢献できるといいます。
ぢぇぃさんいわく、地味家事には注意点もあります。
「派手家事優先の原則」「これ見よがしの禁止」「リスペクトの推奨」
地味家事をこなしても見返り(感謝)を求めてはいけない。声高に「やったよ」と宣言してはならない。お互いに敬意をもつことが重要だといいます。
育児も家事も「半分半分」が理想
「世の中は無意識のうちに、子育て中の女性にいろいろなことを要求しているように感じます」と語るぢぇぃさん。
「僕とかが、ちょこっと朝ごはんを作ったり、お弁当を作ったりしたら『●●ちゃんのパパすごいね』と言われる。だから楽しくなって頑張れるんですけど、お母さんなら『当たり前』。女性に求められているハードルはとても高いんです」
「育児参加するお父さんはえらい」「育休を取るお父さんはすごい」「家事を手伝うお父さんは理想的」
今回の取材前、筆者は無意識的にこのような考え方をもっていたことに気がつきます。育休パパのぢぇぃさんが、妻のこーうつさんを支えているものと考えていました。
ところが、ぢぇぃさんの話を聞いていくなかで、「仕事に出ている頑張り屋」のこーうつさんを支えているのがぢぇぃさんであり、ぢぇぃさんの育休を支えているのがこーうつさんなのだとわかりました。お互いに支え合っている。そのパワーバランスが絶妙です。
「イラつく」ことも多い育休のなかで、「昼寝ができる」「時間にルーズな僕が、時間を気にせず過ごすことができる」「子どもの成長を日々見ることができる」という特権を得ている、と微笑むぢぇぃさん。
「育児も家事も半分半分が理想です。どちらかが60%負担すると無理がかかります。お互いが50%を担う。これが一番です」という話からは、バランス感覚のよさがうかがえます。
身の回りのもので創作活動
11か月の育休中のぢぇぃさんは、自然科学系の専門職に就いています。勤める会社は、男性が育休を取りやすい環境で、「とても感謝しています」と語ります。
ぢぇぃさんはnoteで日々の出来事を投稿しながら、世の中の女性の大変さ、男性が育児&家事に参加するコツなどと併せて、「植物はマジでスゴイ」と自然に対するリスペクトを記事にして公開。専門知識を誰が読んでもわかりやすい文章に置き換えて共有しています。
ほかにも、段ボールアート、イラスト、短編の執筆などの創作をたしなんでいることから、筆者が思わず「子育て中に自由時間があって恵まれている、うらやましい、ずるいと感じる方もいるかもしれませんね」と聞くと、「世の中のみんなに好かれるのは無理ですから」と人懐こい笑顔で答えてくれました。
創作のためのパーツは身の回りにあるものばかり。無駄な消費よりも生産活動を楽しむ日々。リサイクルショップでジャンク品を買って直したり、安いおもちゃで何時間も楽しんだり。ぢぇぃさんは「遊び上手」な大人です。
達成感が足らない育児、妻へのリスペクト
「育児というのは絶対的に達成感が足りません。何キロ走ればいいのかわからない持久走のよう」
「記事で僕を主役にしないでください。奥さんと世の中の子育て中の女性への配慮をお願いします」
ぢぇぃさんにとっては、自分のやっていることが認められるよりも、「好きを通り越して尊敬している」植物、そして家族との日常がもっとも大切です。
「2022年の6月頃には第3子が生まれるんです」というぢぇぃさんの膝では「無所属・自由人」かつ「抱っこ大好き・お母さん大好き」な3歳の長男が、真面目に語る父親をおもちゃにしていました。
正解のない子育てのひとつの在り方として、ぢぇぃさんの汗と涙で書かれた軽妙な文章を、ぜひ読んでみてください。
『育児、マジでイラつくけど楽しいよ』