Twitterに投稿されたファンキーなおじいちゃんの写真が、反響を呼んでいます。座っている場所こそ縁側ですが、着ている服は、ズボンもシャツも鮮やかな赤! ベージュのコートを羽織り、サングラスをかけ、首には鮮やかな水色の生地にピンクと青の模様が映えるスカーフを巻いています。そして、歯を見せて快活に笑っているのでした。
このツイートには10万件以上のいいねがつき、「痺れる程の格好良さ!!」「惚れてまう!」「うちのじいちゃんにもカッコいい格好させて、写真を撮ってあげたくなりました」などのコメントが集まっています。
この写真の撮影を企画したのは、国産ジーンズブランドRockwell Japan代表の祇園涼介さんです。祇園さんはテレビ番組『激レアさんを連れてきた。』で、1年間穴を掘って地下映画館を作った男として紹介されたことでも知られています。祇園さんにこの写真を撮った経緯について取材すると、おじいちゃんとの心温まるエピソードを聞くことができました。
赤い服を着たいけど
写真のおじいちゃんは三好さん、御年88歳です。祇園さんが1年半前に岡山県の真庭市に移住してきてから近所になり、野菜をよくもらっていました。その時に、「わけぇーの(若い人)はいろいろ出来るかもしれんけど、年取ると赤い服とか元気の出る服を着たいけど、周りの目もあるしなかなか(着られない)」と、三好さんが言っていたそう。
いつももらってばかりで何かお返しをしたいと考えていた祇園さん。「歳を重ねたからこそ出来るファッションってあると思う」と考えました。
そして三好さんに「僕たちが着られないような物が、(三好さんには)映えて絶対にカッコよくなるから着てみる?」と提案したことがきっかけになりました。
三好さんは、着たい気持ちはありながらも、最初は「そんなんちょっと恥ずかしいわ」という感じだったそう。しかし、何だかんだ言いつつもすぐ服に袖を通してくれるところや、「作業着じゃねえとおかしかろう」と言いながらすぐジャケットを着てくれたり、ニヤついていたりというところから、「結構ノリ気やん!」と思って嬉しかったと祇園さんは笑って話します。
赤をおさえない
「僕らの(若い人が着る)ファッションを考える時に、赤などの明るい色を一色決めるとそれを黒などの暗い色でおさえてバランスをとろうとすると思います。それをしないように心がけました」と祇園さんは言います。
明るい色をおさえてしまうと、歳を重ねてやっと着こなせる服ではなくなって、普通の平凡な服になってしまうと考えました。
「僕の三好さんのイメージは赤か黄色で、三好さんも赤と黄色は元気の出る色だとずっと仰っていたので、その色は入れたいと思っていました」
今回、いつもと違う服を着た三好さんは、普段よりもすごくエネルギッシュだったと言います。
「小走りしていたり、軽トラのドアを閉める力が強かったり、アクセル捌きもよかったです。冗談の数もいつもより多かったです。ファッションって外見だけではなく中身もすごく変えるものだなと思いました」
このことを祇園さんはツイートで『これぞファッションの力』と表現しています。
やってみたら全然違った
祇園さんに、三好さんを撮影してみての感想を聞きました。
「最初は、三好さんにいつももらってばっかりだし、楽しんで、いい思い出作ってもらえたらという感覚でやっていました。やってみると、なんか全然違ったな、と思っています。一緒の空間で一つの物をみんなで作り上げていくという事に、こっちがエネルギーをもらっていると思いました」
撮影した写真を三好さんに見せると「ええわ。そんなん」と言いながらのぞき込んで見てくれて、その姿に安心したそうです。今度は、撮影した写真をポスターサイズに大きくして持っていこうと考えています。
「多分いらんって言われるんですけど、そう言いながら、次(僕が家へ)行ったら飾っているんだと思います」
祇園さんは三好さんのことを「柔軟な考え方を持っていて、年齢を重ねた今でもたくさんの本を読んで勉強し続けている人です。途上国と呼ばれる国への支援にも熱心な方で、尊敬しています」と話していました。ただ、仲良しなだけではなく、祇園さんの三好さんを慕う気持ちが通じているのでしょう。写真の三好さんの笑顔には、ファッションの力はもちろん、祇園さんへの親しみの気持ちも溢れているのではないかと感じました。