お正月、おみくじは引きますか?
香川県の東部にある白鳥神社では、一風変わった「ハマチみくじ」があります。社務所の前を見ると、たらいの中にたくさんの張り子型のハマチが入っています。近くには釣り竿が置かれていて、ハマチを釣るとそこにおみくじが付いているという、まるで縁日にきたような楽しいおみくじです。
このハマチみくじについて、白鳥神社・神職の猪熊さんに話を聞きました。
地域ゆかりのハマチをおみくじに
ハマチみくじは、2020年から始まったもので、実はその前までは鯛のおみくじだったそうです。鯛のおみくじ自体は全国にあるもので、そんなに珍しいものではないそうです。白鳥神社でしか体験出来ないものを出していきたいと思っていた猪熊さんたちは、ここならではのおみくじはないかと考えていました。
この白鳥神社のある東かがわ市は、ハマチ養殖の発祥地として知られています。それに加えて、ハマチは成長と共に名前が変わることから、「出世魚」と呼ばれています。また、白鳥神社のある地域ではおめでたい時に、鯛ではなくハマチをお供えする人が多かったそうです。このような理由から、ハマチみくじを作ることを決めたそうです。
猪熊さんは一緒に働いている人の意見を聞きながらゼロから制作にかかりました。形はどうするか、色をどうするか、形になるまで1年間くらいかかったそうです。
「いろいろ協力いただきながらですが、参拝者の方にこんなの出したら喜んでくれるかなと考えながら楽しくやっています、例えば、ハマチを置く場所も魚屋さんのようにしたら面白いんじゃないか。いけすにしたら楽しいんじゃないかと考えています」
ハマチみくじを引く年齢層は、お年寄りから小さい子までさまざまで、時期もお正月だけに集中しているわけではないようです。
「今までは、おみくじは年始に引く方が大半でした。ハマチみくじに関しては時期が関係ないんです。『年に1回しか普段は引かないんだけれども、面白いから』って言いながら引く方が結構います」
2021年9月からは、それまで青色だけだったハマチに、金色が加わりました。2022年のお正月も、この2色のハマチみくじを引くことができます。
新しい発見、飽きない工夫を
白鳥神社では他にも独自の取り組みとして、地元の企業と作った手袋みくじなどがあります。また境内を見渡すと神社ではあまり見かけない、たくさんの風車が風にふかれて音を立てながら回っています。
なぜどんどん新しいことを取り入れていくのか、猪熊さんは次のように話します。
「神社という所は今も昔も変わらない所ですから、だからこそ変わっていくという所が魅力になると思います。ひと月前に神社に参拝に来たけれど、ふた月目に来たらまた新しい発見があったとか、飽きない工夫というのを大体2か月くらいの間隔で私どもはしています」
そんな新しい取り組みをどんどん入れていく過程でも失敗はあるそうです。
「失敗はいろいろあります。1つは物事がよく回りますようにという意味で風車を800個近く飾りました。クリスマスの時には緑の風車で、もみの木を表現していたのですが、分かりにくくて失敗したなと思いました。今は、お正月仕様で赤と白の紅白にしています」
「失敗も楽しいんです」と快活に笑って話す猪熊さん。楽しんで取り組んでいる事が伝わってきます。今年の初詣で、一風変わったおみくじを引いてみるのはいかがでしょうか。