一瞬本物かな?と思ってしまうような、リアルで精緻な刺繍作品を制作するDmkさん。モチーフは身近な食べ物。よく目を凝らすと、使われている糸の色の多さに驚かされます。
普段は別の仕事に就きながら、空いた時間を見つけて刺繍作品を制作していて、現在は食べ物モチーフを中心に制作活動をしています。
今回は作品の制作過程や今後の夢について話を聞きました。
食べ物モチーフの刺繍作品を作り始めたきっかけ
Dmkさんが刺繍を始めたのは高校生の頃、趣味としての作品作りだったといいます。その後美大に進学し、日本画を専攻していました。そんな時、ハンドメイドの目玉焼きをモチーフにしたグッズを目にして、刺繍でやったらおもしろいんじゃないかなと感じたそうです。
そして、実際に様々な色の糸を使って作ってみたところ想像以上にリアルにできたので、本格的に食べ物モチーフの刺繍を始めました。
リアルな刺繍作品ができるまで
モチーフはすべて日常生活の中で、スーパーなどで見かけたもの。日本画の静物着彩画を描くときのように、まずは作りたいモチーフの写真を撮ったりスケッチをして色合いや形を決めイメージを固めてから、それに一番近い色合いの刺繍糸を手芸店で購入します。糸は色を自分で染めるのではなく、すべて既成のものを使用。ひとつの作品で使う糸はなんと20~30色ほどだといいます。
「白一色でもいろいろな白があるので、黄みを帯びたもの、ピンクがかったもの、灰色っぽいとか青っぽいなど、同じ白でもたくさんの糸を使っています」
また、実際に希望する色の糸がない場合は、自分が感じた色合いの糸を縫い重ね、足りない色を作っていくと話してくれました。作品から離れて見てみると、実際に混ざったように見えるそうです。
縫い方は並縫いですが、ブロッコリーとか寿司の米などはつぶつぶ、でこぼこなど食材の質感を出すため、ヨーロッパ刺繍の技法を使ったりするそうです。
二度と同じものは作れない!
今までで一番難しかったのはアジの干物をモチーフにした作品。2~3か月ほどかかってようやく完成したそうです。
「2時間縫い進めても、たったの1~2cmしか進まないので、本当にアジの干物に見えるのか不安に思いながら毎日の隙間時間を見つけて完成させました。」
また、一度作った作品でも刺繍の特性上、二度と同じものは作れないといいます。
「刺繍作品はその時一度きりしか作れないので、色合いの選び方など特に神経を使っています」
イメージにとらわれない作品を
最後に今後も大切にしていきたいことと、挑戦したいことについて聞きました。
大切にしたいのは、一つの作品に対して、根を詰めてやり込みすぎず少しずつ手直しして改善しながら制作すること。その作品を客観的に離れて見てみると、改善点が見えてくると話します。
そして挑戦したいのは、刺繍というイメージの枠にとらわれない作品作り。
「刺繍自体が、あまり大きなサイズの作品のイメージがないので、例えばタカアシガニなど、あえてサイズの大きなモチーフを選んでリアルな作品を作ってみたいです。刺繍というイメージの枠にとらわれない作品作りを、していきたいです」
現在、Dmkさんの作品は、愛知県のギャラリー龍屋にて12月25日まで開催中の合同展示会「TATSUYA ART COMPETITION 2021」に出展中です。