親子で始めた日本一周の旅 ママライターが「第二のふるさと」を探すワケ

親子で始めた日本一周の旅 ママライターが「第二のふるさと」を探すワケ
親子で日本一周旅を始めた、取材ライターのカミイマイさん

2021年秋、親子で日本一周を始めた人がいる。旅する取材ライター・カミイマイさんだ。
体調を崩して前職を辞め、ライターに転向してからは、全国各地の観光スポットや伝統工芸などを取材してきた。しかし、自身の今後を考えるうちに「第二のふるさと」が欲しくなり、日本一周の旅を始めることにしたという。

なぜ、『親子で日本一周の旅』を始めたのか?

大崎下島の…息子さん。
大崎下島の…息子さん。

「自分の居場所を1か所に絞らず、複数の拠点に人間関係がある状態をつくりたいと思ったんです。息子を妊娠したとき、私には仕事関係の友人しかいないことに愕然としたので……」

さらに、自分が歳を重ねることを想像したとき、交友関係が狭まるリスクに危機感を覚えた。

「実父が歳を取って、最近張り合いがなくなってきたんですね。それで妙に、自分が歳を取ることをリアルに考えるようになってしまって。高齢になっても自分らしく生き生きと過ごすために、やはり居場所はいろいろなところにあった方が良い。それで、実家のある福岡と今住んでいる東京以外の、第二のふるさとを探しに、日本を一周することに決めました」

行く先々で…もしている
行く先々で…もしている

イメージするのは、多拠点での生活。月の半分を東京で過ごし、残りは家族と“第二のふるさと”で過ごす。ただの別荘滞在ではなく、現地で住民の一人として溶け込みながら、子育てと仕事をやっていきたいと考えている。

「息子には多くの大人と触れ合わせたいので、のどかな田舎で、気軽に集まりながら適度に世話を焼くような環境に出逢えたら理想的だと思います。もちろん、私もこれまでの経験を活かして、地域の人や産業にも深くコミットしていきたいです」

尾道の滞在…らの風景。
尾道の滞在…らの風景。

日本一周は、今年5歳となったカミイさんの子どもも一緒に行くことに。幼く、感性が豊かなうちにさまざまな経験を積ませたいと思ったからだ。
「外の世界でいろいろな経験をすることで、息子には自分の可能性の広げ方を知っておいてほしいんです。私は幼少期にほとんど遠出をしたことがなくて、大人になるまで、世界は広くてたくさんの選択肢があるということに気づけなかったので」

その土地で…いるそう。
その土地で…いるそう。

旅の中で感じた子どもの成長

実際の日本一周は、10月14日に長野県からスタート。SNSや自治体の移住相談で縁ができた、京都や鳥取、青森など12の都道府県に滞在した。各地に魅力を感じたが、特に印象深かったのは鳥取と広島だという。
「鳥取は、子どもに寛容な空気を感じました。子連れ旅では息子を静かに行儀よくさせることに気をつけますが、鳥取は行く先々で『そんなこと気にしなくて良い、もっと自由にさせなさい』と言ってもらえたんです。鳥取県全体で子育てに力を入れているそうですが、地元の方の意識と行動が子育てしやすい街をつくっているように思いましたね」

兵庫県川西…収している
兵庫県川西…収している

広島県では、当初予定していなかった大崎下島にも訪れた。旅先で知り合った人に「おもしろい地域がある」と教えてもらったからだ。

「大崎下島は『一般社団法人まめな』が中心となって、人生100年時代に暮らしやすい地域づくりを試みています。訪問介護が充実していたり、自ら学ぶ市民を育てる学育プロジェクトを行っていたりと、住民500名ほどの集落全体の価値観や取り組みがとても興味深かったです。予定変更にはなりましたが、行って良かったです」

日本一周を始めておよそ1か月半、各地で濃密な時間を過ごせたことで、子どもにも良い影響があったとカミイさんは話す。

「この旅を通じて、息子はこれまで以上に人見知りをしなくなりました。自然農法の農園に行って収穫を体験したりと、東京ではできないことを経験し、たくさんの大人と触れ合ったことで、コミュニケーション力は育ったのかなと思います」

現地の人と…た息子さん
現地の人と…た息子さん

今後は地方創生に関わる仕事も

年末に福岡を訪れて、年内の活動は終了。翌年は1月に四国、2月に東北か北海道を訪れ、5月の大型連休前後にまた旅を再開する予定だ。沖縄県など、行ってみたい土地はまだたくさんある。
「どこも魅力的だったので、実は第二のふるさとの候補地を絞り切れていないんですよ。まずは全国各地に赴いて、そこに住む人や環境を知ろうと思っています。候補地を絞れたら、2回、3回と訪れて、現地での仕事や住まいを探したいですね」

その土地な…心をつかむ
その土地な…心をつかむ
雪の降る青…るゆ)温泉
雪の降る青…るゆ)温泉

日本一周の旅は、カミイさんの仕事にも影響を与えつつある。ライターの仕事だけでなく、伝統産業を扱う地方企業の支援やコミュニティのサポートなど、地方創生に関わる仕事の依頼が少しずつ増えているのだ。

「日本各地に訪れた私の知見や情報を、どこかでお役に立てられたらと考えています。コロナ禍で地方は厳しいと言われることもありますが、私の見てきた限りでは、地方でもU・I・Nターンを含めた新しい生き方・働き方を模索している人が増えているんですよね。地方はきっとこの1~2年が勝負になる。地方創生のコミュニティでも議論を重ねながら、私なりに地方の役に立つ仕事を創り出そうと模索中です」

新たな生き方・働き方を模索するカミイマイさんの旅は、まだまだ続いていく。

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