香川中央高等学校3年の松本叶(まつもときょう)君は、所属する臥風流吟詠会の師範です。先日、地元・高松市で、詩吟を聞いたことのない地域の人々に向けて、詩吟を披露しました。
会場では、松本君が自己紹介や詩吟の説明を行ったあと、スマホから流れる和楽器の音にのせて、力強い声で吟じました。その場にいた小学生たちも、真剣に耳を傾けていました。
吟じ終わった後、会場は拍手に包まれました。松本君に対して、「ありがとう。感動した」「詩吟よかったよ」とたくさんの人が声をかけていました。
一番声が大きかった
松本君が詩吟をはじめたのは、小学2年生の頃。幼稚園の時の園長先生から「あなたは幼稚園にいる時に一番声が大きかったから詩吟をやってみないか」と声をかけられたことがきっかけだったそうです。
「(最初は)正直楽しそうというのはなかったですね。それまで楽しいリズムの音楽しか聞いたことがなかったので、詩吟の変わったテンポを聞いて、不思議さの方が勝っていました」
学校では、授業の中で吟じたこともあったとか。小学生の時の同級生の反応は「なにこれ。ポカーンというかんじ」だったそうです。中学生になると、「すごいね」とはなるが、変な曲を聞いているという雰囲気になったといいます。
「やっぱり周りが全然知らんから、それが逆に面白いな、となりました」
飛び級で自信に『師範をとりたい』
香川県の流派、臥風流吟詠会には、現在約800人が所属しています。初心者は2級からのスタートで、2級、1級、初段、二段、三段、四段、五段、準師範、師範補と続き、最上位が師範です。試験は年に1回で、飛び級制度もあります。
通常は1つずつ上に上がっていくところを、松本君は、初めて試験を受けた時から2回続けて飛び級が出来たそうです。その時、嬉しかった気持ちをきっかけに『師範をとりたい』と思うようになりました。そして練習を重ね、高校生にして最上位の師範に合格するまでに上達したのです。
おばあちゃんの言葉
「詩吟の練習を辞めたいと思わなかったのですか?」という筆者の質問に「めちゃめちゃなりますよ!!」と言う松本君。それでも続けてこられたのは、「自分でやりたいと言ってやり始めたら、最後までやり遂げなさい」という、祖母の言葉が大きかったと言います。
「あぁそうやな。自分で『やりたい』って言い始めたしなと思って続けました」
松本君は母子家庭で育ち、基本的に祖父母と生活を共にしてきたそうです。
「僕は大学で東京へ行くつもりなので、(師範がとれた時)おばあちゃんから『東京へ行く前に師範がとれてよかったね』と言われました」
大学での詩吟は?
「大学へ行ってしたいことはありますか?」と聞くと「東京へ行くので、遊びたいです!」と笑って答えてくれた松本君。「詩吟もサークルのような活動があればやってみたい」ということです。
詩吟は地域によって流派がかわるそうですが、今度は東京のどこかで、松本君の詩吟を聞くことができるかもしれません。