浄土宗の開祖・法然上人が幼年時代に修業した寺として知られている、岡山県奈義町の菩提寺。その境内に、地元の人から「菩提寺の大イチョウ」と呼ばれ親しまれている、推定樹齢930年のイチョウの大樹が、紅葉の見頃を迎えた。国の天然記念物に指定されており、町ではイチョウを町木に指定し、その保護に力を注いでいる。
この「大イチョウ」は紅葉の見頃の時期、奈義町観光協会の協力でライトアップが行われる。その取り組みに関わっている、同協会会長の鷹取渡さんと、副会長の黒藪富吉さんに話を聞いた。
歴史ある菩提寺の大イチョウ
菩提寺の境内にそびえる大イチョウは、高さ約45m、目通り幹囲約13m。国定公園にも指定されている那岐山(標高1255m)の中腹600m辺りに位置する場所にある。
この菩提寺もパワースポットとして人気の場所の一つ。平安時代からある寺で、法然上人が修行の際に、麓にある阿弥陀堂のイチョウの枝を折って杖にして山へ上り、到着した菩提寺の境内に学業成就を祈願して挿した杖から芽吹いて、この大イチョウが育ったと言われている。
この伝承は裏付けも行われており、2013年に「菩提樹の大イチョウ」と「阿弥陀堂のイチョウ」のDNA鑑定を行った結果、両木には生物学的なつながりがあることが証明されている。
また、菩提樹から北方に伸びた枝が大雪により、折れ刺さり育ったといわれる樹齢230年ほどになる奈義町指定の「天明のイチョウ」も傍にある。こちらもDNA鑑定により一致していることが判明しているそうだ。
災難にも立ち向かい生命力あふれる大樹
930年もの時を過ごす大樹だが、災難にも見舞われてきた。1955年に根元の空洞に住み着いていたホンドテンを追い出すためにつけた火が幹に燃え移ったことがあった。また、何度も台風の被害を受けている。
直近では2019年に大型の台風19号が直撃し大きな枝が折損した。無残にも太い枝が根元に横たわり、変わり果てた姿に心を痛めた人も多かった。
「以前は、もっと幹が張り出していて。ライトアップした時の迫力もすごかった。折れた枝を再利用し大イチョウのそばにベンチを作りました。ベンチにしてからも芽が出ていた姿に大イチョウの溢れる生命力を感じました」と黒藪さん。
そのような苦難を乗り越え今尚、若枝もいきいきと伸び、生命力あふれるこの木のそばに行くと、目には見えない大きなパワーとエネルギーを感じる。出産前に、無事に子どもが産まれますようにと願いに訪れた人もいるそうだ。
定期的に、樹木医によって木の管理がされており、根を傷めないようにと幹回りに遊歩道が作られるなどの配慮がなされている。周辺の雑草の手入れなどは観光協会の人々によって行われている。
4日間限定 夜のライトアップ
新型コロナ禍になる前は、ライトアップのイベント中に甘酒やコーヒーなどが振る舞われたり、コンサートが行われたりしていたそう。「新型コロナウイルスが落ち着いたら、また、甘酒をふるまったり、コンサートなどのイベントを行ったりしたいですね」と鷹取さんは話してくれた。
2021年は11月20日~23日の期間、17時~20時の間でライトアップをする予定。今年は、様々な色が出せるLEDライトの用意をしており、どんな色でライトアップするかは検討中との事。この機会にぜひ、「菩提樹の大イチョウ」を見に訪れてみてはいかがだろうか。