大学卒業後に単身海を渡り、海外リーグに挑戦する1人のサッカー選手がいます。ポルトガルのポルティモネンセ・U-23に加入したFW中野優太選手。海外挑戦の裏側にあった、コロナ禍での様々な葛藤や今の思いについて取材しました。
コロナ禍で固まった海外挑戦という目標
元プロサッカー選手の父を持つ中野選手にとって、サッカーとの出会いは必然でした。小さいころから自然とサッカーに触れ始め、小学校・中学校では西日本選抜、清水エスパルスユースに所属していた高校時にはU-16日本代表にも選出されるほどに成長します。
しかし、プロになることを夢見て、同志社大学でサッカーに打ち込んでいた矢先に新型コロナウイルスが蔓延。チーム練習も中止となりました。開催されるか分からない大会に向けてコンディションだけは落とせないと、1人で練習する日々を過ごしました。
そしてコロナ禍で、今まで以上に様々な物事に関心を持ち、情報収集をする中で心境に変化が。
「日本だけの価値観で生きていってもいい未来が描けないというか、経験しなければいけない世界が外には広がっているんじゃないかなと」
サッカーでの成長と人生を豊かにするための選択として、海外挑戦することを決意したのです。
挫折の先に掴んだ契約
海外でのプレーを目指して準備を進めていましたが、コロナ禍の影響もあり、なかなか思うように話が進まない日々が続きます。卒業後も進路が決まらず、地元の香川県に戻り、トレーニングに励む毎日。周囲が新天地で新たな生活を始める一方で、他の人とは違う選択をし、なかなかチームも決まらない状況に不安を感じていたと言います。
「人生で一番挫折したのがこの期間で、メンタル的にもすごくきつかったですね」
しかし、自分の決断を尊重し支えてくれる家族のため、そして何よりサッカーが好きという強い思いで、決して諦めることなくトレーニングに励んだ結果、ポルティモネンセ・U-23からのオファーを掴み取りました。
海外でプレーすることの難しさ
ポルトガルに渡り、一番の壁となっているのがチームメイトとの対話です。プレー中の細かい指示や要求が出来ないことによって、伝えたいことを伝えられない歯がゆさを感じていると言います。
「今までは、どういうボールが欲しいかとかここに今出してくれとか、すごく共有していたんですけど、こっちに来てからは具体的な説明ができないので、それが難しいところです」
また、スピードを生かしたDFラインの裏への飛び出しや、足元の技術は通用すると感じている一方、今まであまり求められてこなかったデュエル(球際)の強さが求められるなど、プレー面でも日本との違いを感じています。
そんな中でも、プライベートでもチームメイトと積極的にコミュニケーションを取ったり、日頃からデュエルを意識してトレーニングに励んだりと、日々努力を積み重ねています。
目標とするトップチーム昇格に向けて
コロナ禍の影響で、思うようにチームで活動できなかった大学時代を経験したことで、現在チームとしてサッカーをできる喜びを改めて感じながらプレーしている中野選手。8月の紅白戦では1試合で3得点1アシストと、好調をアピールしました。勢いそのままに、GK中村航輔選手も所属するトップチームへの昇格を目指し、目に見える結果を追い続けます。