帰国、そして、被災地へ
そうしてグアテマラでの活動を終えた片岡さんは日本へ帰国。派遣前に勤めていた病院での勤務を再開し、岡山で医療に従事していた時、東日本大震災が起こった。片岡さんも岡山からの医療派遣チームに参加し、南三陸町や大船渡市で活動した。
帰国当初は、南米などの開発途上国で再び国際協力に携わりたいという気持ちがあった。しかし、震災の惨状を目の前にし、短期的に医療が大事なのはもちろんだが、長期的に見た時には食・環境が大事だという思いが強くなり、「日本でできることをやっていかなければ!」と日本で活動していくことに決めたのだという。
健康に生きるため、仲間たちとともに
その後、岡山県内で食や運動などをテーマに健康講座を実施。化学肥料や農薬を使わない自然な製法で作られた野菜は美味しく、ヒトを元気にする。地域のつながりを大切にしながら、健康に生きるために必要な知識や農業を学び発信し続けていくうちに、自然栽培歴30年の農家や助産師、保育士など様々な仲間と繋がっていった。
そんな中、新型コロナウイルスが人々を苦しめ始めた。仕事は自宅で会議もリモート、飲み会や外食などは自粛を求められる。人と人とのつながりが分断されるような日常を余儀なくされる中、片岡さんは同じ気持ちを持つ仲間たちとNPO法人こうのさとを起ち上げ、活動をはじめた。
「祝福のワ」を広げるまちづくり
その土地に生まれてくる子どもを地域のみんなでむかえる。孤独に子どもを育てるのではなく、地域で子どもを育てていく古き良き日本のような、朗らかに子育てができるようなコミュニティ形成を目指しているという。
立ちあげたばかりではあるが、2020年末に畑を借りて土地づくりから始め、無農薬・無化学肥料で育てた野菜を地域に暮らす妊婦さんたちに届ける活動は28回を超えた。
こうのさとが実施している「みんなで畑活」事業では、みんなで子どもを見守りつつ畑仕事をする。畑の真ん中には子どもたちのはしゃぐ声。作業後には用水路で道具のお手入れ。そして、畑で汗をかいたあとは同じ釜の飯を食らう。そこには丁寧で豊かなコミュニティがあった。
仲間から妊婦さん、そして次の仲間へ
「今、こうのさとで育てた野菜を食べてくれている妊婦さんが、今度は生まれてきた子どもと一緒に畑に来てくれて、また新たな命を授かった妊婦さんに野菜を届ける。そんな風にみんなで助け合えるコミュニティを作れたら」と語る片岡さんの夢は輝いている。
もちろん、農作業や事業を回す仕組みづくりなど苦労は絶えない。今後は一部の畑を企業などに貸し出すことも計画しているという。会社の人が畑を作り、産休を取っている同僚の妊婦さんに届ける。生まれてくる命をみんなで祝福するのはもちろん、妊婦さんも畑に少しでも参加することで、産休後の社会復帰のためのコミュニケーションの場になるのではないかと片岡さんは語る。
社長も社員も産休中の社員もみんなで多様性を重んじながら、学びあい、助け合う姿が目に浮かぶ。片岡さんのまちづくりの挑戦はこれからも続く。