“買う、買わない”より大事なことがある 移住先の大阪で“相談のできるレコードショップ”を開いたDJが目指すもの 大阪・北区

“買う、買わない”より大事なことがある 移住先の大阪で“相談のできるレコードショップ”を開いたDJが目指すもの 大阪・北区
「プロフェッショナルとは?」との問いにおどけてみせるNAKAMさん

FunTricks! Records(ファントリックス・レコード)は、いわば相談のできるレコードショップ。大阪・梅田からほど近い、かつてのカラオケバーにはカウンターが横たわり、自然と音楽談義が弾む距離感の近さが自慢です。

気さくな人柄で迎えてくれるのは、老舗クラブ・NOONなどでDJも務めるNAKAM(ナカム)さん。長く暮らした首都圏を離れ、2020年6月に店をオープンさせるまでには、いったいどのような紆余曲折があったのでしょうか。カウンター越しの店主に、ゆっくり話をうかがいました。

野球少年のち裏原系、ところによってはDJ

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いまでこそレコードショップを開くまでになったNAKAMさんですが、もともとは根っからの野球少年。高校は地元・埼玉の強豪校で、甲子園でも春夏2度のベンチ入りを果たすほどの実力者でした。そんな事情も手伝ってか、音楽的には「遅咲き」の部類だったといいます。

大学でも野球に明け暮れたものの、一方で社会に出てやりたいことが見つからず、卒業後は以前から関心のあった服飾の専門学校に進学。この選択が、現在のNAKAMさんを形づくるうえでの転機になります。

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というのも、いわゆる裏原系を好んだNAKAMさんの周囲には、自然とカルチャーシーンに造詣の深い友人が集まってきたから。それまでJ-POPばかり聴いていたのが、周囲の刺激を受けて新宿のクラブに入り浸るようになり、パンク、ロック、レゲエと音楽の守備範囲を広げていきました。

紳士服店に就職してからは、自らもDJとしてターンテーブルの前に立つように。ダンスミュージックを主体にジャンルや時代を横断する、幅広いリスニング経験に裏打ちされたプレースタイルを確立していきました。そんな日々が10年ほど続き、紳士服店を退職するに至ります。

「仕事辞めた理由が特になくて。ただ、レコ屋をやりたいってのは漠然とあったんですよ。だから適当にネットショップを始めて。で、東京近郊を出てみたいとも思って。すでにイベントなんかで知り合いがいたから、大阪行ってみようって感じっす」

そう語るように、退職後のNAKAMさんは自身のフィーリングの赴くままに大阪行きを決めます。いざ首都圏を離れてみると、想像以上に大阪の環境が肌に合ったそうです。

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「クラブも多いし、いろんな人がいて、いろんな場所があって。大阪って飲みに行った先でも、初対面の人とめちゃめちゃ仲よくなるじゃないですか。あの感じが好きでしたからね」

趣味の飲み歩きも充実するなど居心地のよさを存分に体感し、大阪に店を持ちたいと明確なビジョンを描くようになったNAKAMさん。しかし皮肉なことに、ネットショップの運営以外にこれといった仕事をしていなかったことから、1日1食という必死の節約術もむなしく貯金が底を突いてしまいます。

結果的には、1年間の「大阪視察」。実家に帰省し、アルバイトで開業資金を貯めて大阪に戻ったのは、それから2年後のことでした。

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