イギリス発祥のパークランを、香川にも! 参加者の心と体の「健康」をサポートするコミュニティづくりの極意とは

イギリス発祥のパークランを、香川にも! 参加者の心と体の「健康」をサポートするコミュニティづくりの極意とは
パークランオリジナルのTシャツを着たアンジェラさん

世界各地の公園で、毎週無料で行なっているコミュニティーイベント「Parkrun(パークラン)」を知っていますか?参加者は走るために公園に集まりますが、このイベントの魅力は「走る」こと以外にもあります。

初心者でも楽しいコミュニティイベント「Parkrun(パークラン)」とは?

今回は、参加者が心身ともに健康になる活動を通して香川の地域コミュニティの活性化を目指し、香川県にある公園「さぬきこどもの国」にてボランティア及び本社のあるイギリス本部との橋渡し役をしている、ディレクターのアンジェラ福留さんに話を聞きました。

アンジェラさんは1994年に日本政府のJETプログラム(語学指導等を行う外国青年招致事業)で愛媛県へ来たのち、1998年には出身地イギリスへ一時帰国。2008年に香川県へ再来日し、香川県在住13年目になります。

―パークランイベントに参加されるまでの、いきさつを聞かせてください。

香川でのイベントが始まったのは、自分の子どもがまだ小さいころで、香川に誰も知り合いがいないときでした。何かをスタートさせると人は前向きになるし、今まで出来なかったことが出来るようになると、さらに元気になれますよね。イベントに参加して他の人とのつながりが広がると、孤独な気持ちが癒されてどんどん幸せな気持ちになりました。

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ほぼ毎週参加し、5キロ走るのが普通になって次第にハーフ、フルマラソンに参加するようになりました。今までの自分では絶対無理だったことが、練習すればできるようになるという達成感がありました。

―今までしたことがなかったのに、なぜ走ろうと思いましたか?

私は元々、健康的とは言えず常にやせようとしていました。でも、ダイエットするだけでは物足りない気持ちがあって。出身地のイギリスで「普段はソファでのんびりしていた人でも少しずつ走りながら5キロ走れるようになろう」という意味の「Couch to 5k (カウチトゥ5キロメーターズ)」という健康ブームが流行っていました。無数の取り組みがある中でも特に、老若男女誰でもウェルカムな雰囲気のパークランにとても惹かれました。

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―周りに一緒にする人がいることで、モチベーションが上がったんですね。

そうなんです!一緒に走ってコースをまわる人がいれば楽しいから。なので、日本にもあったらいいのにという思いで、イギリスの本部に「日本にも来る予定はないんですか?」と問い合わせたこともあるくらいですよ。

アンジェラさんがイギリスで初めてパークランに参加したのは2016年でしたが、その2年後にパークラン事務局から「香川県でパークランのディレクターをしませんか?」との連絡があり、現在に至ります。

―日本とイギリスでイベントの違いはありますか?

スタート時間が違うだけですね。イギリスでは朝の9時、日本では1時間早く8時にスタートします。他は全て同じです。誰でも無料で参加でき、オンラインでアカウントをつくってもらい、オリジナルのバーコードをもっていけば世界中のパークランに参加できます。

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小さいときから夢中になることは素敵

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―参加者のうち、一番印象残った人はいますか?

親子で参加した人がいて、その子どもたちですね。最初、子どもたちにとって5キロ走るのは長くてやる気なくつらそうにみえました。でも、毎週参加するうちに次第にわくわくした表情になっていくのがすごく印象的で。そしてなんと、私の地元である坂出市の天狗マラソンという、15キロ走るマラソンのイベントに参加した時、スタート時にその親子がいるのを発見して、思わず声を掛けました「頑張って!!」って。

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親子や家族で参加すると、途中で走るのをやめた子どもが、そこからボランティアを始めたりと、とっても自由なんです。気軽に誰でも参加してほしいと思います。

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スポーツ自体は昔からあまり得意ではなく、一緒に取り組む人がいなかったことなどから、さらにスポーツが苦手になったというアンジェラさん。しかし今は、一番最後までどんな時も全参加者を応援するスタイルのパークランが本当に大好きだといいます。

参加者の数ではない、心のつながり

―パークランをしていて印象残った場面などありますか?

パークランは世界中どこの開催地でも天候に関係なく開催することが多いです。いつか……お正月に雪の予報がなかったにも関わらず雪が降ったときがあって。でも、そんな天候にもかかわらず参加者が多かったんです。雪の中でも走りたい人が多かったことに正直とても驚きました。

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たとえ参加者が1人しかいない時でも、雪が降っていても、「開催すること」「参加すること」に意義があります。パークランは、記録を目指すだけの開催ではないため、ゲスト同士の気持ちのつながりが強いイベントなのだと改めて思いました。

―パークランに関わるうえでの、新しい目標などはありますか?

イギリスでは、走り終わった後に参加者同士がカフェでお茶ができるように、中心街の公園でパークランが開催されたりもします。香川でもカフェなどに気軽に行ける便利で参加しやすい場所にもっとイベントの場を増やしたいですね。そうなると問題は、今よりも更にボランティアの数が必要になること。私が最初にイギリスで参加したときの参加者は50人程度だったのが、数年後には250人程にもなりました。世界的に、パークランの人気はどんどん高まっているんですよ。

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さらにパークランは、その地域の人が参加するだけでなく、休暇中に実家へ里帰りした人や、開催各地のパークランにスタンプラリー感覚で参加する人など、世界中から集まる「パークランツーリスト」と呼ばれる人たちに会えるのが大きな魅力です。

―イベント参加者を増やす取り組みをしていますか?

FacebookなどSNSで発信をしていますが、やはりボランティアより参加者になりたい人(走る人)が多数ですね。でも、走りたい人の中でも、2か月に1回くらいボランティアをしてくれる人がいれば大変助かります。それでも、「走りたい」という皆さんの気持ちはとってもわかりますけどね(笑)

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―アンジェラさんがずっと参加していて気が付いたことなど聞かせてください。

パークランという名前ですが、私は「ラン」というイベントの名前にこだわらず、ランナーじゃない人にもぜひ参加してほしいと思っています。日本人は一つのことを専門的に思いっきりやる人が多いと思っていますが、同時にコミュニティに入りにくい人が多い印象も受けます。パークランというよりパークイベントに近いので、どなたでも気軽に参加してほしいです。誰でも始めるまでは初心者ですから。

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―今後のアンジェラさんの目標を聞かせてください。

参加者1人でも200人でも、ずっとパークランをし続けたいです。どんな人数でもモチベーションは「楽しい」という気持ちは変わらないですし、コロナ禍で落ち込んでいる人などきっと必要な人がいるはず。一緒に参加して話をしようと言いたいです。ランニングは単なるきっかけ作りだから。

パークランの開催は毎週土曜日ですが、日曜日はパークランジュニアという参加者が子ども中心の3キロランもあります。また、ボランティアの人は走らなくても参加できるため、コミュニティに触れてみたい方は特におすすめで、ボランティアをしてみたい方は、「Parkrun(パークラン)」のウェブサイトにメールを出せばよいそうです。

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