オセロ、野球盤、人生ゲーム……誰もが一度は遊んだ懐かしのボードゲームが、おうち時間が増えた今、再注目されている。スマホやPCなどのゲームが全盛期の中、アナログなボードゲームの魅力はどこにあるのか。その世界にどっぷりとハマり、香川県高松市でボードゲームを考案・制作をしている橋口剛志さんに尋ねた。
ボードゲームと出会い、デザイナーになるまで
10代の頃、周りの友達がテレビゲームやアーケードゲームに夢中になる中、眺めて満足していたという橋口さん。プレイすると楽しいが、電子で構成されたプログラムの中で遊ばれているという気持ちを抱いたそう。そんな中、ドイツの人気ボートゲームが日本で販売されたことをきっかけに、その面白さにのめり込んでいったという。
自分で作り始めたのは1998年頃、ボードゲーム仲間の「自分たちで作らないか」という一言がきっかけだった。当時は漠然と「ボードを使ったゲームは難しいけど、カードならできるだろうな。」という気持ちで作っていたが、そのうち常にアイデアを考えるようになり、“思いついたら書く”を繰り返していた。当時のアイデア帳には、無数のアイデアがびっしりと書き記されている。
橋口さんは現在、ボードゲームデザイナーとしてオリジナルゲームを輩出している。2017年には、4枚のカードを出して得点を稼ぐ「5211」を制作し、カナダの名門レーベルの“Plan B Games”と契約が決まった。現在世界6か国で販売している。
面白いボードゲームを作るには
橋口さんがボードゲームを作る上で大切にしている3つの考え方を教えてくれた。「システム・物語・シチュエーション」だ。
「システム」とは、ゲームの基本的な構造やルールを決めていく方法である。例えば、じゃんけんのグー、チョキ、パーの中で、“気合を入れたグー”だけはパーに勝つといった骨組みを作る。次に「物語」は、ストーリーを仕立てて構成を決めていく。例えば、ドラゴンを倒すゲームを作ると仮定して、武器や資金の調達方法をシナリオに合うように仕組みを考える。最後に「シチュエーション」は、ゲームをプレイする状況を想定して構成を考える。例えば、3人で遊ぶ場合、8人で遊ぶ場合……と状況ごとに違和感のない構成を考えていく。
アイデアが生まれても形になるまでに掛かる時間はさまざま。例えば「5211」は30分という短時間で完成したが、一方で2年掛かっても完成しないゲームもある。その違いは、「“プレイヤーの面白がっている目”を引き出せているかどうか。皆の反応で分かる」だという。頭の中では問題なく構成されているゲームでも、やってみるまでその面白さは分からない。
ボードゲームが心の距離を縮める
ボードゲームには、プレイヤー同士の協力が必要なもの、運の要素が強いもの、推理力が求められるものといった、さまざまなジャンルがある。橋口さんはその面白さを「自分たちがゲームを動かしているという感覚がある」ことだと語る。
「同じゲームでも、プレイヤーが変われば違うストーリーがある。性別や年齢に縛られずルールに従い、同じ環境の中で勝ち負けを競えるっていいよな、面白いよなって思う。麻雀でも打ち手が変わると展開も変わるみたいな、それが長く遊んでいる理由」
また、ボードゲームはコロナ禍で希薄になりがちな、人と人とのコミュニケーションを深めることも役立つという。
「ボードゲームで遊ぶと初対面の人とでも仲良くなれちゃう。ゲームをしているうちに相手の思考を知ろうとするから、相手のことが分かってくるんですよね。」
まだまだステイホームが続く昨今、家族や親しい人との絆をさらに深めることにも、ボードゲームは役立つかもしれない。