香川県高松市にある保護猫カフェ・キャットローフ。「猫の香箱座り」を意味するこの店は、保護された野良猫や捨て猫たちと触れ合えるカフェですが、保護猫の里親を募集して譲渡する活動も行っています。そこには、小さな命を守ろうと奮闘する、猫への愛情にあふれたオーナーの存在がありました。
譲渡型の保護猫カフェ
このカフェの主役はもちろん、猫。オーナーの増田拓也さんが保健所に行ったり、ボランティアからの縁があったり、直接連絡を受けたりして、引き取った猫たちです。
人懐っこくて好奇心の高い猫たちは、2階と3階を自由に行き来します。お気に入りの場所でくつろいだり、常連客に遊んでもらってご満悦な姿を見せたりと、それぞれが自由に過ごしています。
また店内の壁には、譲渡が決まった猫たちの写真がずらりと飾られています。
「最初は、自分が保護した猫だけでカフェをしていました。でも、困っている猫や人がたくさんいる現状を知り、里親を募集する“譲渡型”が猫たちのためになると思ったんです」
増田さんは、里親希望者から住宅環境や先住猫の有無などをヒアリングします。猫の性格と里親希望者の環境が合いそうなら「お試し」期間に移ります。大切にしているのは、猫と人の幸せ。一定期間をおいて猫と人がうまくいけば「譲渡」に繋がります。
「トライアルの段階で、猫たちは、駆虫薬投与、検便、猫エイズウイルス感染症と猫白血病ウイルス感染症の検査、ワクチン接種2回、避妊または去勢手術が全て済んだ状態です。キャットローフが預かる譲渡費用とは、ほとんどがこの検査費用に該当しています」
増田さんのやりがいは、里親先で幸せに暮らす猫たちの姿をSNSで見ること。
「おうちが決まった子の幸せな姿を見ると、やってよかった!と嬉しく思います」
難病を抱えた小さな命を守りたい
2020年11月、保健所から引き取った子猫「サン」が、難病にかかっていると判明しました。キャットローフでは、保護猫に必ず避妊・去勢手術を行っています。サンにも同様に手術を行おうとしましたが、検査の最中、肝臓に異常が見つかり、門脈シャントという聞きなれない病名を告げられました。
「猫の門脈シャントは症例数も少なく、放置したら死んでしまう病気です。香川県内で手術可能な病院は限られていて、手術費も40万円以上かかるだろうと言われました」
次第に調子を崩していくサンの姿に、増田さんは心を痛めます。同時期に、保護猫「しゃけ」の猫伝染性腹膜炎治療(FIP)も進めており、治療資金の調達に悩みました。そして2021年3月にクラウドファンディングに挑戦することを決意しました。
「どうしよう、と悩んだけれど、やめようとは思わなかったんです。好きで始めたことなんで、やってみようと」
小さな命を守ろう。その一心で向き合った結果、店の常連やクラウドファンディングで繋がった人からたくさんの支援を受けることができ、高額な検査代・手術代を賄うことができました。
「支援金も非常に助かったのですが、支援者から送られてきたメッセージが、本当に嬉しかったです。これまでやっていたことが、形になって見えたんです」
手術も無事成功し、サンは順調に回復。増田さんに経過を見守られながら、母親に甘えたり、仲間たちと遊んだりしながら、のんびり過ごしています。
「もう少し大きくなって去勢手術が済んだら、母親猫と共に里親さんになってくれる方を探します。情が移ると寂しくなるけれど、どんどん次の子がやってくる現実もあるので、日々頑張っています」
猫がいないとだめ
保護猫たちに“仕えている”と自称する増田さんは、猫たちへの愛情でいっぱいです。生まれた時から猫がそばにいる環境で育ったことで「猫がいないとだめ」なんだそう。
「猫と『猫飼いたいな』と思ってくれる人を、もっと繋げていきたい。それが、これからの目標です」
自分だけでなく、誰かの“猫がそばにいる環境”を作るために、日々試行錯誤する増田さん。そのそばで、保護猫たちは、新しい家族との出会いを待っています。