え、猫がケーキをかぶっている!?
かぶっているのは、ショートケーキ、ホットケーキなどのスイーツのほか、果物やハンバーガー、楽器やゴルフボールなどさまざま。この、リアルな猫にポップさを加えた「かぶりねこ」シリーズを手掛けるのは、香川県在住の造形作家・ベン山口さんです。
「猫はもともと好きなんですけど、曲線とかシルエットが美しいなって。でも猫だけじゃなくて、もうちょっとポップな感じにしたくて。だからお客さんが、くるくる回しながら『わぁ楽しい』『何これ~?』とポジティブな気持ちになってくれたら嬉しいですね」
こう話すベン山口さんに、ものづくりのきっかけや、制作へのこだわり、そして次なる目標について尋ねました。
ものづくりを始めたきっかけは、戸棚にあった石粉粘土
昔から絵を描くことが好きだったというベン山口さんですが、中学生以降、美術とは全く別の道を歩んできました。しかし、大人になってから転機が訪れます。ある日、ものづくりをしている家族の影響もあってか、”自分でも何か作ってみたい”という衝動にかられました。
「なんとなくリビングの戸棚を開けてみたら、そこに石粉粘土が入っていたんですよ。それが出会いでしたね。母と兄がものづくりをしていて、そこに道具や材料があって。環境が整っていたから今があるんだと思います」
まずは昔から好きだったという鳥のオブジェを作り始め、気がついたら2000個にまでなってしまったそう。その後、知り合いの喫茶店で作品展示の機会に恵まれます。
「2000個の鳥を置いたら、お客さんがすごく楽しんでくれて。すごく好評で。それから犬、猿など、干支を中心に動物を作って、猫、チンパンジーを作り始めたんです。人間も作りますよ」
作家として活動を始めたのは2014年。それから7年たった今もたくさんの動物を作り続けています。
“オールハンドメイド”にこだわる理由
近年はオーダーメイドの発注が増えてきたということですが、オーダーがどんなに増えても、型はとらずに、全て手びねりで1個1個作ることを大切にしています。
「自分の手で『ああでもない、こうでもない』って言いながら作っています。絶対にオールハンドメイド。そこに価値があると思うんで。作品は自分なんです。何か見ながらやると誰かの真似になってしまうような気がするし、型をとると、既製品みたいになってしまう」
オールハンドメイドの作品に、2つとして同じものはありません。少しずつ表情が違ったり、体の曲線が違ったり、1つ1つが個性をもって存在しています。
作家仲間と一緒に地方からの発信を
ベン山口さんは、訪れた人にさまざまな作品に触れてもらうために、個展ではなく、複数の作家での展示会を開催しています。
「作品に触れるためのいろいろな扉があると思うので、食わず嫌いせずに、まず手にとって見てもらいたいですね。個展じゃないので、お気に入りの作家さんや作品を見つけてもらえたら嬉しいです。香川にもいろいろな作家さんがいるから紹介していきたいです」
次なる目標は、地方からの発信。今後は香川を拠点に、東京、大阪、そして海外へ活動の場を広げたいと話します。
「香川は海、山に囲まれてその真ん中に人がいる。制作するにはとてもいい環境です。作家仲間と一緒に東京や大阪で展示会もしたいですが、現在は新型コロナウィルスの影響でなかなか難しい。でもそんな時だからこそ、この香川から、地方から発信できればと考えています」
かぶりねこシリーズが代表作のベン山口さんですが、新作の構想にも着手しているそう。海外進出も見据え、オールハンドメイドにこだわり、自分自身の手で作品に命を吹き込み続けています。