酒蔵×お遍路 プロジェクトへの参加
販売数に悩む2020年末、茂さんは「面白いプロジェクトがある」と誘われました。
それはコロナ禍のために売り上げが激減している酒蔵と、海外や日本各地からの遍路客や参拝者が激減した四国八十八カ所霊場の、両方を応援するプロジェクト。四国の酒蔵から88種類の酒を集め、霊場やお遍路道のラベルデザインを施して通信販売を行うという、新しい取り組みでした。これには四国四県の酒造組合や四国清酒懇話会が関わっており、四国内の50の酒蔵が力を貸していました。
遍路と日本酒。「なぜ、この組み合わせ?」と思うかもしれません。しかし茂さんは違和感なく受け入れられたと言います。
「僕“お接待”をしたことがあるんですよ。10年ほど前、大雨の中宿泊所がなくて困っていたお遍路さんを家に泊めたんです。秋田の方だったかな、今でも年賀状を送ってきてくれるんです。首藤酒造のすぐそばにも62番札所・宝寿寺があって、よくお遍路さんが歩いていますよ」
また、酒販店との何気ない会話のなかで「せっかく愛媛にいるのに、どうしてお遍路巡りをせんのかね?」と言われたこともあったとか。尊敬と親しみを込めながら、茂さんは、お遍路が自分の日常光景にあるものだと教えてくれました。
「僕たちは、いいお酒を作りたいという一つの目的があります。そういえばお遍路さんも、高野山という一つの目標に向かって一歩ずつ進んでいます。そう思うと、僕たちもお遍路さんも同じなんだなぁ」
親しみある「お遍路さん」とのコラボレーションのチャンス。愛媛のお酒をPRしようと「松山三井」という米を使用したお酒で、このプロジェクトに参加することにしたそうです。注文は2021年5月13日まで受け付けています。
海外進出も視野に入れ、歩みは止めない
コロナ禍になる前、台湾からのバイヤーがここ西条市に訪れたことがあり、寿喜心をとても気に入ってくれたそうです。海外での日本酒人気に直に触れたことで、茂さんたちは海外進出も視野に入れています。
「これからも自分たちが思う“理想の酒”に近づいていきたい」
至高の “寿喜心”を求めて。3兄弟の歩みと努力は、これからも続きます。