杉谷里山づくりの会
夏には蛍が舞う自然豊かなまち、岡山県浅口市鴨方町杉谷。「杉谷里山づくりの会」は地元の里山である「杉山」を整備している団体です。4町内会の有志で2015年に立ち上がりました。現在は地区外のメンバーも含め、34人で活動しています。
杉山の頂上にはかつて杉山城があり、今も主郭跡が残っています。頂上には杉山のふもとにある軍神社の奥の院もあり、地域の大切な里山です。
里山の整備とは何をするのでしょう。例えば木が枯れたら伐採し、そこに近くで自然と育った松の苗木を移植します。伐採した木は、登山者が歩きやすいように階段の踏木に使うこともあります。登山道をつくり人を呼ぶことも、里山を守ることに繋がっているのです。
昔は薪を使った生活そのものが、里山の整備に繋がっていました。山に木が少なく、高い木もなく、麓のどこからでも登れたそうです。生活様式が変わり、木が伸び放題に。そうなると太陽の光が入りづらく、山にとってもよくありません。
杉山の山頂付近には桜を植えたそうです。「ふもとから見上げて山頂がピンク色に染まったら、『桜が咲いているんだ、登ってみようかな』と思うでしょ。植えたばかりでまだそんな風になってないけど、これからが楽しみですよ」。そう笑顔で話すのは、杉谷里山づくりの会で広報を担当する神元覚さんです。
神元さんは熊本県宇城市出身。就職を機に岡山県倉敷市に移住し、35歳のときに妻の故郷である杉谷に転居しました。働き盛りの頃から町内会の当番などで地域に関わっていたものの、今のように本格的に活動を始めたのは退職後です。「もともと登山は趣味でした。杉山は里山整備を始める前はうっそうとして、山頂までは道なき道。けれど調べると中世の山城・杉山城跡であることがわかりました。昔から地域にとって大切な山だったんです。インターネットで調べたり、鴨方町史を読んだり、昔から暮らしている方にお話を聞き、杉谷のことがわかってきました」と話します。
「再び景観を楽しみながら山登りができるように」という思いから活動がスタートした杉谷里山づくりの会。道なき道は、歩きやすい登山道になりました。道しるべや説明看板を随所に設置し、初めて訪れる人でも杉谷を知り、楽しみながら歩ける工夫をしています。昔、山の中を駆け巡っていた子どもたちでしょう、「50年ぶりに登ったよ」と話す地元の方もいらっしゃるそうです。
3月29日には、「ぐるっと“杉谷の里山歩き”」が開催されました。4年前から毎年(2020年は中止)開催している春の里山歩きのイベントです。2021年は新型コロナウイルス感染拡大予防のため、対策を行いながら小規模開催となりました。参加者10人が6時間、杉山周辺の登山を楽しみました。