“オランダ風車”を模したカフェはセルフビルド。世界各地を旅し’96に小豆島に辿り着いた家族の軌跡とこれから。 

“オランダ風車”を模したカフェはセルフビルド。世界各地を旅し’96に小豆島に辿り着いた家族の軌跡とこれから。 
実写版映画『魔女の宅急便』では主人公キキの家としてロケ地に選ばれた。

雑草地でカフェ兼自宅をセルフビルド

cupid & cottonは小豆島の主要観光地である小豆島オリーブ公園からほど近くにある。カフェの看板が立つ場所から山の方へ歩いていくこと2分弱。ガラッと雰囲気が変わり、ほかに民家もなにもない海が見える丘にダッチカフェは建つ。

ミシェルさんがこの土地を見つけた時は、ここは雑草地で住めるような状況ではなかったという。そこを業者に頼んで整備し、キャンプ場にした。2人であれこれアイディアを考えながら、キャンプ場を作るなら、カフェも作ろうと決心。当時はアパートに住みながら、まずキャンプ場の近くに半分は自力で、半分は業者に頼み仮住まいを建てた。

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キャンプ場は2004年に完成。ピーク時は一面中テントが張られ、バーベキューの匂いで充満していたと美緒さんは話す。ミシェルさんはキャンプ場を運営しながら、カフェ兼住まいとなる建物をさらにセルフビルドし始めた。

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当時小学生だったYuuskeさんもミシェルさんを手伝った。「父親の作業を手伝って、自分が役に立てたのは、楽しい思い出です」とYuuskeさん。設計含め完成に5年を要した。電気の配線やブリキ部分以外はほとんど自力で完成させたというのだから驚く。ミシェルさんはこれまで特に建築学を学んでいたわけではない。

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「日本に来る前に海外各地を旅行していた頃に、アメリカのキャンプ場で大工仕事を手伝ったり、和歌山のキャンプ場でちょっとしたログハウスを建てるのを手伝ったりしていたので、少しくらいは知識はあったんだと思います。でも、実際に建て始めたら分からないことが出てきて、そうすると、小豆島にいたアメリカ人の知り合いに教えてもらったり、調べたりしていました」と美緒さん。

カフェは2007年にOPEN。当初は美緒さんが作るオランダ風パンケーキ「パネクック」を提供していて、筆者も食べたことがあった。日本で馴染み深いホットケーキとクレープの中間のような厚みの生地はもっちりと美味しくここならではだった。しかし、カフェのオープンも束の間、早すぎる別れが訪れた。2011年11月、ミシェルさんは惜しくもガンで亡くなった。「ぎゅっと凝縮された人生だったんじゃないかな」と美緒さんは話す。キャンプ場は閉め、美緒さんが切り盛りするカフェは続けた。

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家族でつくったカフェ。直しながら、新しくしながら続けていく。

2020年10月にはYuuskeさんが店主に変わりリニューアルオープン。Yuuskeさんは高校卒業後しばらく島を離れていたが、島に帰ってきたことを機に老朽化していた風車の羽根部分を作り直した。

「やっぱりこの建物のシンボルだと思うので。父親が作ったもののコピーなんですけどね。同じ場所に穴を開けて、同じように測って作りました」

昨年は雨漏りを防ぐために、壁を全部張り替えた。現在、カフェは週末のみの営業ではあるが、ストロープワッフルは平日も無人販売している。

「当分はストロープワッフルを中心に広めていきたいです。ゆくゆくは、パネクックを再開したり、オランダ雑貨も取り扱っていきたいです」とYuuskeさん。新メニューを開発したり、YouTubeでの動画配信を試みたり、新しいことにもどんどん挑戦していく。今後は移動販売も考えているのだとか。

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ミシェルさんが亡き今も、家族が補修しながら、住まいとして、カフェとして建物を大切に使い続けている。ここがほかにはない場所に感じるのは、心地の良い場所や方法を体当たりで探し続ける家族が営んでいるからなのかもしれない。

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