攻めの新店オープン
仕事がなくなって宙に浮いた人件費を投じたのは、なんと新しい飲食店の開業準備だった。建物の改装を事務員まで含めた従業員総出で行い、ピクニックをテーマにしたレストラン「ポラリス」を、2020年6月にオープンさせた。
「建物の持ち主も、『この時期なのに大丈夫?』と心配されていたんです。でも、会社として投資をするというスタンスにシフトしたので『やります』と。コロナもあったので、(売上は)丸一年はダメだろうなという思いで始めました」
予想通り、客足の��びは決して良くなかったが、店を立ち上げるという新入社員にとっての代えがたい経験や、予約制のベースビーチと異なる店舗スタイルから得られる“生きた情報”が、会社にとってノウハウの蓄積になったという。8月頃から復調の兆しを見せたベースビーチと合算すると、飲食店部門の売上は、前年比約105パーセントを記録した。
攻めの機材購入
会社売上の7割を占める、ライトアップ・イベント業の立て直しも急務だった。そこで行ったのが、約2000万円を投じての機材の大量購入。売上規模の3分の1という、常識破りの金額だ。イルミネーションの電球の数を5倍、舞台照明の数を3倍に増やしたほか、大型の印刷機や照明卓など、より大規模なイベントにも対応できるようにと準備をした。「そんなに買って大丈夫か」と業者からも心配されるほどだったが、夏頃からそれが功を奏することになった。
屋外で密を避けて楽しめる、コロナ禍でも実施できるイベントということで、ライトアップが再注目されはじめたのだ。このとき、機材を充実させ、どんな要望に対しても「できます」と答えられるようになったことで、提案にも厚みが出ていた。結果として、複数の新しい案件を受注することができ、イベント部門の売上は、前年比130%にまで伸びていた。
元気な会社であり続ける
2020年の全体売上は、約7200万円と、前年比で120パーセント増となった。投資で費用もかさんだため赤字ではあるが、「稼ぐ力」が確実についたことで、回収の道筋はついているという。今後は「コロナだから」という発言をNGにして、どんな状況にでも対応していけるような、柔軟な会社になることが目標だ。
「『こんなときでも元気なんだな』と思われていた方が、その会社に仕事を頼みやすいと思うんですよね。空でも、僕らは元気を見せていきたいと思っています。」
2021年は、購入した大量の機材や、新規オープンした店舗をより有効活用していくために、追加で2名の採用を行い、人材教育にも力を入れていく計画だという。ファーストディレクションの「攻め」は止まらない。