新型コロナウイルス流行の2020年に起こった、熊本県人吉市の水害を覚えていますか?人吉での災害ボランティアで学生リーダーを務めたことをきっかけに、同世代のやりたいことをカタチにするためのシェアハウス兼コワーキングスペースをオープンさせた学生がいます。設立者の東海大学3年生、前元盾哉(まえもと・じゅんや)さんに、その思いを尋ねました!
みんなの思いをかなえる追い風に
前元さんが熊本市内に4月1日にオープンしたのは、学生向けシェアハウスとコワーキングスペースをかねた『FolloWINd』。名前は「追い風(Following Wind)」から来ており、「自分も挑戦しやすい環境を作りつつ、みんなの追い風になれるように」という思いから名付けたそう。
ここでは、①学生と学生同士をつなげること、②学生と大人たちをつなげること、③熊本市とほかの地域をつなげることの3つを目指し、町おこしにつながるイベントを行っていく予定です。「僕自身がこのシェアハウスを軸に活動をしながら、ここに来れば、常に何か一緒にできることや出会いがある場所にしていきたい」と話してくれました。
水害ボランティアで気づかされたこと
前元さんがシェアハウスを作ったきっかけは、2020年におきた人吉市の水害で、ボランティアに参加したことでした。熊本市にいた自身は被害を受けず、「はじめは他人事だった」前元さんですが、知り合いに声をかけられて「一般社団法人 熊本支援チーム」に参加。泥まみれになってしまった家や道路の片付け作業をするなかで、「キッチンとか大切な思い出も泥まみれになっているのが衝撃的だった」。メディアが伝えられていないリアルな現状に直面しました。
大きな課題として、新型コロナウイルスの影響がありました。熊本地震の際のボランティアは、約8割が県外在住者だったほど県外のボランティアが頼りでしたが、今回は新型コロナウイルスがネックに。そこで熊本支援チームはクラウドファンディングで県外から資金を集め、県内のボランティア学生に給与として出す仕組みを構築しました。
そんな大人の姿を目の当たりにした前元さんは、「学生もなにか工夫しなきゃ。僕らができることってなんだろう?」と考えます。そこで前元さんがポロリと「バスを出すといいと思うんですよね」と言うと、周りの大人が「いいじゃん!」と賛同。人吉市は熊本市から車で1時間。ボランティアに行きたくてもいけない学生や、車がない学生が人吉に通えるよう、シャトルバス運行を実現させました。
「それが自信になったし、大学生活を振り返るきっかけになった」と前元さん。もともと「自分で何かプロジェクトを動かしたい!」という気持ちで大学に入ったのに、アルバイトや大学生活の充足する中でその思いを忘れていたそう。
「今思うと、大学生活を無駄にするところだった。実際に思いを実現する大人たちをそばで見ていて、アイディアを口にすると、やれない理由ではなく『こうすれば実現できるんじゃない』と言ってくれた。こういう環境にいれば、これまでに描いていたアイディアも形にできるんだ、と気づかされました」
学生の未熟なアイディアも、磨けばちゃんとモノになる!夢を持ち続ける場にしたい
「学生のアイデアってたくさんあるし、何かはわからないけど学生のうちに何かしたい!と思っている学生はたくさんいる」と前元さん。ただ、学生のアイデアの詰めの甘さもよくわかっている彼は、「理想をどう実現しようか」を一緒に考えられるような環境が大事だといいます。
シェアハウスとコワーキングスペースを兼ねたFolloWINGだからこそ、お酒を片手に夢を語り合ったり、来てくれた大人にアドバイスを求めたりしながらアイディアが実現につながりそうです。
「僕のアイデアも『夢見すぎなんじゃないの』と未だに言われるけど、そうだとしても磨き続けたらカタチになるかもしれない。夢を持ち続けられる場がここだったらいいな」と静かに、まっすぐ語ってくれた前元さん。FolloWINdの追い風を受け、学生たちがどんな夢をカタチにするのか、とても楽しみです!