みんなの意識が変わってきたという手応え
活動を通じて得たことも励みになっている。行く先々で、地域に根ざす動物園の窮状を知り、力になりたいと思っている人が多いことがわかった。
「僕たちの活動は、みんなの思いの受け皿。協力したいけど何をしたらいいかわからないという人たちに、方向を示してあげることができるんです」。
当初は、池田動物園が民営か公営かすら知らない人も多かったが、「あって当たり前と思っていた施設が、もしかしたらなくなるかもしれないという危機意識を持ってもらえるようになった」のも大きな変化だ。
さらに、2020年11月には岡山青年会議所、岡山せとうちライオンズクラブなど岡山の経済界の4団体と「おうえんする会」とで「池田動物園ZOOっとプロジェクト」が発足。「テレビや街頭募金などで会の活動を見ていた人たちが、一緒にやろうと協力を申し出てくれたんです」。
地道な努力が、多くの人々に動物園の現状や同会の活動を知ってもらい、支援の輪を広げることにつながっているのは間違いない。
動物園公営の署名活動を始めた理由
会の長期的なテーマである公営化のための署名活動を始めたのは2016年5月。同年2月に象のメリーが高齢で亡くなったのがきっかけだ。
49年もの間、動物園の人気者として愛されていたメリーを惜しみ、市民や県民はたくさんの感謝の言葉や花を捧げた。こんなに愛されていたメリーのためにも動物園のためにもぜひ公営化をと、約10か月かけて署名を行い、2017年2月17日に6万7488筆の署名と「公営化を求める陳情書」を岡山市長に提出。同年11月14日に岡山市を交えて「池田動物園の未来を考える会」が開かれたが、その後の新しい展開には至らなかった。
一人ひとりの力が大きな力になる
会が発足して7年。動物園の公営化という大きな目標を見据えながら、日々、活動に力を注ぐ同会。現在の目前のテーマは、老朽化したトイレの改修工事のための募金活動だ。
メンバー約100人とはいえみんな本業を抱えての活動であり、その多くは資金面のサポートメンバーで、実際に稼働できるのは10人程度。なかにはやむなく辞めていく人もおり、ボランティアならではの悩みは尽きない。入れ替わりを繰り返しながらも、「池田動物園を残したい」という共通の思いが会の活動を支えている。
一人一人の力は小さくても、集まれば大きな力になる。「個の力の大きさというのは、確かにあると思います。今後は、主力となって動くことができる人をもっと増やしていかなければ」と杉原さんは力を込める。
池田動物園の明るい未来に向けて、一人でも多くの支援者に恵まれ、理想に一歩一歩近くことができるよう、「池田動物園をおうえんする会」の活躍を祈りたい。