お気に入りだったけど、もう着られないセーター。お父さんの古いセーター。みなさんの洋服だんすの中にもありませんか?着ていないセーターを、ももひきに生まれ変わらせる…そんなワークショップが、地域から出る廃材をクリエイティブにリユース(再利用)する実験をおこなうIDEA R LAB(岡山県倉敷市玉島中央町)で行われました。主催するのは、岡山県美咲町(みさきちょう)で地域おこし協力隊をするフランス人のメラニー・マノさん。ドキドキとワクワクのつまったワークショップの様子をお届けします!
セーターを大胆に切って縫うと…驚きのリメイクに目が釘づけ
1月にしてはあたたかい日ざしのなか、7名の参加者がセーターを手に集まりました。セーターをどう加工すれば、ももひきになるんでしょう?メラニーさんがまず実演をしてみせると、「すごい!」「なるほど〜!」の声が。
参加者もいざ、挑戦。最初にはさみを入れるときは緊張が走りますが、だんだん形になっていくと「かわいい」「いいじゃん!」とあちこちで声が上がります。「これからセーターを見るときの目が変わるよねぇ」手を動かしながらおしゃべりする参加者のみなさん。
なごやかな雰囲気のなか、思い思いのリメイクを楽しみました。はじめること約3時間、世界に一つだけのももひきが出来上がり。無地のものも柄のものも、それぞれ素敵です。さっそく履いてみて「あったかーい!」「わー、かわいい!」歓声があがります。
洋服を通して、もう一度「つながり」をつくる
主催者のメラニーさんの思いをうかがいました。メラニーさんは13歳までフランスで育ち、日本へ。東京やアメリカ、埼玉などに住んだのち、畑のある生活を求めて2年前に岡山県美咲町へ。藍を種から育て、藍染に取り組んでいます。地域おこし協力隊の仕事として、縫いものや編みものなどの手仕事を通じて、人と人とがつながる場「tetotelaboてとてらぼ」を開催。小学生からお年寄りまで多世代が交流し、教え合ったり楽しいアイディアが生まれたりしています。セーターをももひきにするのは、高知県で「暮らし」を軸に活動する「yumahare」井上佳織さんの智慧だそうです。
子どものころから服にまつわる「もったいない」という気持ちをもっていた、と話してくれました。自身はものを大事にする家に育ちましたが、おばあちゃんの家には親戚のいらない服の箱が山積み。それらがメラニーさんにとっては宝の山だったそう。美咲町でも、古い家にたくさんある着物を家主が「これはゴミだから」と言っていたことに「ゴミじゃない!」と驚き、「わたし、もらいます」ともらい受けたことも。
そんな「もったいない」「古いものを大事に」という気持ちから、服とつながり直せるこのワークショップ。「人とのつながり」もまた、大切なキーワードです。このワークショップでは、自分のセーターをリメイクする人もいれば、家族の思い出のセーターをリメイクする人も。父や祖父のセーターなど、自分のセーターとしては着られないけど、リメイクして身につけることで家族とのつながりを感じられる、と言います。
母国フランスにはずっと帰れていないというメラニーさん。「長年、家族と離れて生活しているので、肌に触れるものが家族にまつわるものだと居心地のよさを感じます」と笑顔。古いものを生まれ変わらせて身につけることは、服とのつながりだけではなく、自分の周りにいる人とのつながりを取り戻させてくれる手段なのですね。
セーターからももひきへのリメイクのしかたは、同じくyumehareさんからの暮らしの智慧を受け継ぐ「交衣室mege」さんのインターネット上に公開されています。ももひきだけではなく靴下のつくりかたも。レッグウォーマーやぬいぐるみもいいかもしれません。この冬、家に眠っているセーターを引っ張り出して、手を動かしてみませんか?