私たちが、スーパーなどで見かけるハチミツの多くは、養蜂のために西洋から移入されてきたセイヨウミツバチ由来のもの。対して、在来種であるニホンミツバチのハチミツは、流通シェアが1%にも満たないと言われています。また、ニホンミツバチのハチミツはいろんな花の蜜から集められた「百花蜜」で、蜜源によって味・香り・風味などが様々で、とても希少なんです。
そんな珍しいニホンミツバチがつくるハチミツの小瓶を、岡山県奈義町の田園の中にあるカフェ「蔵」で見つけました。手に取ると、「早野さん家のはちみつ」とかわいい手描きのイラストが。このイラストに描かれた「早野さん」とは一体…?
車屋さんから養蜂の道へ
イラストに描かれている男性の正体は、奈義町出身で、61歳まで車の整備士と販売をしていた、早野精一さん(65)でした。退職後に農業をすることを考えていたところ、興味を持ったのがニホンミツバチの養蜂だったそうです。
地域の先輩が、早野さんの家の裏山へ捕獲箱を設置したのが、養蜂との初めての出会いでした。
「ここにもハチが集まるんじゃ!おもしろい!」
養蜂経験のなかった早野さんは、先輩から話を聞いたり、本やインターネットで情報収集をしたりして、自身の庭に10個の捕獲箱を置きました。
「初めはうまくいかんでなぁ。」
1年目はハチがなかなか集まらず、2年目から捕獲箱の置き場所などを工夫しました。暑すぎず、涼しすぎず、風があたりすぎない、木漏れ日がさすような場所に捕獲箱を設置していきます。
温厚なニホンミツバチに惚れて
神経質で、一度巣を作っても居心地が悪いと巣を離れてしまったり、スムシがわくと捕獲箱から逃げてしまったりと飼育が難しく、採取できる蜜の量もセイヨウミツバチと比べて少ないニホンミツバチ。しかし早野さんは、「置き場所の対策が面倒なんじゃけど、集団で攻撃したりせん温厚で大人しい性格が好きじゃな」と愛着を持っている様子。
中山間地域ながら、那岐山の麓に開けた土地をもつ奈義町。早野さん家のニホンミツバチは、春にはツバキ・クロガネモチ・サクラ・クリの花、秋にはソバの花など、町内に咲く様々な花の蜜を吸っていて、独特の風味があるそうです。
「みんなに味わってもらって、美味しいと言ってもらえたらうれしいなぁ。」
今まで、収穫したハチミツは近所の人にあげたり、ごく一部のお店に置いていただけだったという「早野さん家のはちみつ」。2020年12月から、ふるさと納税返礼品の、詰め合わせセットのひとつに仲間入りしています。