コロナ耐性と深掘りが新たなスタイルを生み出した
白川さんによれば、Bagus!はメンバー全員が揃って初めて成立する「バンド」ではなく、あくまでも「チーム」だそう。一人ひとりが本業を持っているだけに、「出席制」でライブを行っていた時期もありました。現にキーボード担当の辻敦子さんは第1子が生まれ、「育休」の真っ最中。このことが、結果的にコロナ禍における活動に奏功します。
ライブに関しては、自身のソロ、小西さんとのデュオ、フルセットと、柔軟にその形を変えて。また、「Lovers From Home」の立案には、かつてインディーシーンを沸かせたバンド・プププランドでギターを弾いていた吉川淳人さんが関わりました。加えて「チークタイム」のリリースにこぎ着けた背景には、懇意にしているレコードショップ・ハワイレコードの尽力がありました。
ステージに上がる6人のメンバー以外にも、活動を支える「チームメイト」がいる。ライブが減ったぶん、数々の「アドバイザー」と考えをぶつけ合える機会が増える。これらが、彼らのアドバンテージになっていることは言うまでもないでしょう。
一方で白川さん自身の体験が現在のBagus!、すなわち「愛だの恋だの」を歌うBagus!を形づくった事実も見逃せません。
「ラブソングってフレームをつけた方が、そこでどんどん上手になってくやろし」
「『なんでもできます』は『何もできません』と言ってるのと一緒やから」
そう考えるきっかけを与えてくれたのが、ドキュメンタリー映画「ザ・ストーリー・オブ・ラヴァーズ・ロック」。軽快なリズムに乗せ、体を寄せ合う男女の姿を描いたこの作品を通して、演奏と鑑賞の両面で自らにフィットする音楽を見つけていたことが、チーム体制で音楽を深める土台をつくっていたのです。
コロナを乗り越え、進化を続けるために必要なものとは
新たなチームのあり方を模索するなかで、着々と実力を上げてきたBagus!。昨年11月には、大沢伸一さん、新羅慎二(若旦那)さんによるラジオ番組にも出演を果たしました。
また、自身を育ててくれたライブハウスの置かれた苦境をおもんばかりながらも、ライブというフレームに執着することはなくなってきたとのことです。
それはつまり、コロナ禍を受けて没頭するようになった創作活動に、より重きを置くというもの。ポップな音楽性でありながら、まだまだ知名度に劣るラヴァーズ・ロックというジャンルを、いずれはお茶の間にまで届けたいと目論んでいます。
「なんかこう、ビールあったらうれしいくらいの感じかな。生活のなかの嗜好品的な感じね」
そうして、こうも続けてくれました。
「おもしろいもんつくってるとか、常にそういうことがあるんが長く続く秘訣でしょ」
これを言い換えてみれば、いつもなんらかのニュースがある、動きを見せる体制を築き上げてきたことが、ウィズコロナでこそ活性化したBagus!の推進力になっていたというわけ。
「忘れるでしょう」の歌詞にも歌われているように、未曽有の危機もいつか忘れられるときが来る。ステイホームを単なる「ステイ」にしてしまわなければ、新型コロナウイルスという脅威も、私たちが前へと進むきっかけを与えてくれるのかもしれません。