香川県綾歌郡綾川町に、風変わりなカレー屋がある。週末だけ住宅の「庭」に現れる「スパイス家族 カラクラ」だ。
その味は一級品で、遠方からカレーマニアが訪れるほど。様々なスパイスが複雑に絡み合う重厚な辣さと、胃の中から全身にエネルギーが染み渡る感覚。ショップカードには「食べるパワースポット」と書かれてあるが、これ、まさに。
店主で家主の森さんは平日に他の仕事をしながら、奥さんと二人三脚でカラクラを営業している。趣味は大道芸。最近はyoutuberデビューも果たした。
この風変わりな店主はどんな人生を歩んで来たのか?なぜ、庭でカレー屋を始めたのか?その謎を追ううちに、最先端の働き方が見えてきた。
「店主とカレーの運命の出会い」
森さんがスパイスカレーに出会ったのは、2000年。インドを放浪している時だった。独特の文化に圧倒されながら6か月間も過ごすうちに、スパイスカレーの味に魅了された。路傍の屋台から高級レストランまで、どこにでもカレーはあったが、同じ味が存在しない多様性に深みを感じた。
転機が訪れたのはそれから8年後の2008年。当時、役者として活動をしていた森さんは、チャンスを求めて東京に移り住んだ。何気なく選んだアルバイト先が、某有名スパイスカレー屋だったのである。
「インドでの経験が影響していたのでしょう。いつのまにか役者の活動はおざなりになり、朝から晩までカレーづくりに没頭するようになったんです」
カラクラの味は、この経験を土台に編み出した、スパイスの黄金比がベースになっている。インドのカレー文化に敬意を示し、自らの感性を加えるカラクラ流は、こうして誕生した。