岡山県奈義町の一角に広がるキャベツ畑。このキャベツを育てている山田憲史さんは、オーストラリアで活躍していた元騎手です。ブレない気持ちを胸に、農家として今の人生を生きる山田さんに話を聞きました。
オーストラリアで夢を叶える
山田さんは、群馬県太田市の出身。競馬のゲームが好きで、中学生の頃から中央競馬の試験を受けたいと思っていましたが、日本では体重制限がクリアできないということで一度は騎手になる夢を断念。しかし高校生の時、たまたま見た競馬雑誌で、オーストラリアでは体重制限なく騎手になれることを知った山田さんは、在学中にオーストラリアにある騎手や調教師などを目指す人が通う学校に、1週間の体験入学をしました。
「やりたいことがあればやればいい」という父親の言葉も背中を押し、高校卒業後にその学校に入学。卒業後は騎手免許を取得し、念願の騎手として働く日々を過ごしていました。
競馬では『速い馬はおとなしい馬』とされていますが、山田さんはあえて気性が荒くおとなしくない馬を選んでいたそうです。理由は『誰も乗らない馬に乗りたいから』。
自分にしか扱えない、他の人は敬遠するような馬に乗ることにスリルを感じ、乗れた時の達成感を味わったことで、「人と違うことをしたい」と思ったとのこと。
大きな転機となったのは2015年、落馬事故による脳出血。ドクターストップで、やむを得ず騎手人生を終わらせることを決めたそうです。
おとなしい馬に乗っていたらもっと騎手人生が長かったであろうと話す山田さんでしたが、馬選びに悔いはないとのこと。スリルを感じ、自分にしか乗れない馬を求めていたからこそ、自分がなりたかった騎手になることができたということです。
ブレない気持ちを胸に 農業の道へ
騎手になりたくてオーストラリアに移り住んだため、騎手ができないのであれば滞在する意味がなくなったと思った山田さんは、日本に帰って野菜などを育てる農業をしてみようと考えました。オーストラリア時代に家庭菜園をやっていたそうで、一から育て、試行錯誤しながら成長していく過程を面白いと感じたといいます。そして、自然が豊かで農業に適しており、妻の実家がある奈義町を就農の地として選んだということです。
広戸風(ひろとかぜ)という、山から吹き下ろす岡山県北特有の強い風による被害を恐れて、今まで規模の大きいキャベツ畑は作られてきませんでしたが、いざ作ってみると、キャベツは風の影響はほとんど受けない野菜だったそうです。
「食わず嫌いならぬ、作り嫌いの発想だったのでしょう」と山田さん。
収穫したキャベツはカットするため工場に送られ、そこから全国へ出荷されます。
近隣の直売所では、丸ごとのキャベツを販売しています。
また、山田さんはブルーベリーやアスパラガスも栽培しています。
ブルーベリーは奈義町では珍しく「誰も栽培してないものを」と始めたそう。
騎手の頃から抱いていた「人と違うことをしたい」という思いは、農業にも受け継がれていました。
共通点は「育てる」面白さ
オーストラリアの学校では、赤ちゃんの馬を育てることもしていたという山田さん。
馬と野菜の『育てる』という面白さはどこか似ていると話します。馬も野菜も小さい頃から育てると成長が見られ、日に日に変わっていく姿を見ていると面白い。愛情込めて世話をしていけば、立派なものになってくれるといいます。
大切にしているのが「ただ野菜を作るのではなく、体にいい野菜を作りたい。」という思い。
山田さん自身、子どもがいるのでその思いも強くなったのだとか。
野菜の購入者からは「苦みやえぐみがなく食べやすい。」「子供がよく食べる」といった声があるそうで、まさに山田さんの思いが届いているように感じました。
そんな山田さんにキャベツのおいしい食べ方を聞きました。
オススメはキャベツ丼。ごはんの上に千切りキャベツを乗せ、ごま油と醤油をかけるだけ。
簡単なのに何杯でもおかわりできてしまうキャベツ丼、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。