子育て中のママさんから高齢者の方まで幅広い世代の方が利用する岡山県奈義町の『奈義しごとえん』。
「好きな時間に気軽にお仕事できる地域密着型のワークシェアリングです。」
代表理事を務める桑村由和さんはそう話します。
町の事業所の「ちょっと手伝ってほしい」、住民の「ちょっと働きたい」という声をつないだ、その画期的なシステムとは・・・?
地域密着型のワークシェアリング
(桑村由和さん)
「 “雇用関係”ではなく、“登録制”なので、自分の能力や都合に合わせて仕事を選べることが特徴です。」
奈義しごとえんには約220名が登録していて、そのうち約7割は女性です。
町や町内の事業所、町民から受け付けた仕事の情報を、しごとえんが登録メンバーにSNSで配信し、仕事をしたいメンバーが連絡をする仕組みです。
登録者の得意なことを活かして、スタッフから仕事を依頼することもあります。
奈義町民へ届く広報紙の挟み込み作業などの仕分けや封入、アンケート調査の結果集計、裁縫の経験を活かした洋服への名札の縫い付け作業など、仕事件数は年間1000件に迫ろうとしています。
キャリアブランクを気にせず”ちょっと”働ける子育てママや専業主婦
奈義しごとえんには、子育てママを対象に、仕事をしている間に子どもを見守る「こもりん」という制度があります。仕事をする時間に子どもを預け、他の人が仕事をする時にはその人の子どもを預かる、時間トレード制です。
「子育て中のちょっと手が空いた時間に働けるので助かる。」
「専業主婦からのブランクを気にせず、仕事の感覚を取り戻す練習の場になっていい。仕事に復帰する自信になった。」と利用者。
孤独になりがちな子育て中、人とつながることができることに安心する人もいるそうです。
(桑村由和さん)
「子育て世代のママさんたちが気楽に足を運べ、働ける場所の必要性を感じた。町の経済を回し、安心して子育てができる奈義町にするため、多種多様の仕事をより多く請け負っていきたい。」
自分の役割を見いだすシルバー世代
第一線を退いたシルバー世代の方々は、自身の技能を活かして草刈りや屋内軽作業など幅広い仕事をしながら、地域貢献をしています。登録メンバーの一人は「自分の役割を見いだせていい。やりがいを感じる。」と話します。
町民の約35%を65歳以上が占める奈義町。簡単な軽作業など、気兼ねなく相談してもらえる場所として、高齢者の困りごとなども引き受けます。
(桑村由和さん)
「高齢者の困りごとに対応できるように、できるだけいろんなことを引き受けていきたい。」
町民のキャリアアップにも貢献したい
桑村さんは、自身がもっている専門知識を活かし、今年度導入したラジコン草刈り機などの修理や点検を行ったり、月に一度あるスマホ教室で、自ら指導したりすることもあるそうです。
「仕事と人をつなぐだけでなく、働き手と地域の関わり、地域経済の循環、町民のキャリアアップにも貢献したい。今後はテレワークを増やし、文化的な事業にも取り組み、働き方の多様性や地域のコミュニティー活動にさらに貢献したい。」
仕事づくりは、人づくりであり、ひいては町づくりにつながると、桑村さんは考えています。