妊娠がわかったとき「このまま順調でいてほしい…」と願いながら妊娠生活を送るお母さんも多いでしょう。しかし、時には医師から心配なことを告げられる場合もあります。そうしたとき、居ても立っても居られない気持ちになるでしょう。
2児のママであるlalaさんは、1番目の男の子を2706gで出産しました。しかし、2番目の子どもは妊娠18週のときに「赤ちゃんが小さいかも…」と医師から指摘され、妊娠30週で女の子を出産します。648gの超低出生体重でした。
lalaさんは、ブログ(リトルベイビー応援ブログ)でも妊娠から出産までのストーリーを紹介しています。また、Instagramのアカウント【@lala_little_baby】では、お子さんの成長記録が投稿され「感動を思い出しました」「涙出ました」などのコメントが寄せられています。
今回は、妊娠から出産までのことや、SNSでお子さんのことを発信していく思いなどをlalaさんに聞きました。
「赤ちゃんが小さいかも…」
lalaさんが初めて「赤ちゃんが小さいかも」と指摘されたのは、妊娠18週のときでした。
「足の長さが短く、頭の大きさが小さい」と言われ、赤ちゃんの推定体重は181g。妊娠18週での赤ちゃんの平均体重は個人差や誤差がありますが、目安として約200gと言われています。
医師からそのように言われたlalaさんは「気のせいだろう」「誤差だろう」と思い、あまり気に留めていなかったといいます。 しかし、その後のエコーでも赤ちゃんの大きさの指摘は変わりませんでした。妊娠21週では、推定体重324g(-1.7SD)、23週では推定体重349g(-3.0SD)だったのです。
※SD(標準偏差)…子どもの成長が平均範囲内にあるかどうかを評価する際に使用されます。一般的に「+2SD」から「-2SD」が標準的な成長の範囲とされています。
このままでは出産できず大きな病院へ転院する必要があるものの、医師は伝えにくい表情をしていました。そのため、lalaさんの方から「転院しないといけませんね…」と涙を流しながら話をしたといいます。
「私がいけなかったのでしょうか?仕事をしすぎたせいでしょうか?」と医師に泣きながら聞くlalaさんの疑問に「そんなことはないです!お母さんのせいではないです!」と、励ましてもらったそうです。
そして、その日のうちにNICUのある大学病院へ転院。転院先で診察を受けたところ、胎児発育不全(FGR)と診断されました。
※胎児発育不全(FGR)…何らかの理由で子宮内での胎児の発育が遅延あるいは停止したために、在胎週数に相当した胎児の発育が見られない状態をいいます。
胎児発育不全は、お腹の中でも生まれてからも原因がわからないことが多いとされています。しかし、lalaさんの場合はエコー検査で、胎児発育不全の原因のひとつが「単一臍帯動脈」だとわかったのでした。
通常、臍帯(へその緒)には2本の動脈と1本の静脈が通っており、この血管が赤ちゃんとお母さんの体をつないで栄養や酸素を運びます。ところが「単一臍帯動脈」の場合は動脈が1本しかなく、もう1本の動脈が欠けているのです。単一臍帯動脈は比較的よくあるケースで、赤ちゃんは健康に生まれ、特に問題が起きないことも多いといいます。
重度に赤ちゃんが小さい「胎児発育不全」の原因が分かったが、そのための治療法はなく、出産までこの臍帯で行くしかないと言われます。
医師は「lalaさんのせいではない」と励ましましたが「旦那の夜勤のことや上の子の育児、仕事…とお腹の赤ちゃんのことを全然考えてあげられていなかった自分を責め続けて、とても苦しい思いをしました」と語ります。
この転院までの妊娠21週から23週までの間に、lalaさんは2つの決断をしました。
旦那さんの夜勤によって、lalaさん自身の体と精神的に負担があったのは事実でしたが、どうにもならないのに夜勤について責めてしまうこともあったのです。そこで、旦那さんの夜勤、上の子の育児、自身の仕事のどれかを手放し、どのようにしたら赤ちゃんのことを守れるかを考え「自分の仕事を手放す」という答えを出しました。
仕事を継続したい気持ちはあり、悔しかったlalaさんですが、旦那さんと相談して休職(病休)に入ることを選んだのです。
また転院に関しては、医師から話があるかもしれないこと、そして管理入院も想定していたといいます。管理入院となれば、上のお子さんを誰かが見なくてはなりません。旦那さんは夜勤で自宅での育児は難しいため、管理入院となったときには、旦那さんのご両親に当時2歳のお子さんを預けることを話し合っていました。
管理入院から出産へ
lalaさんが管理入院となったのは、妊娠28週のときでした。
「突然破水した」「今すぐ出産になってしまった」のような状況ではなかったため、入院が決まるまで家で過ごし、出産まで時間があったことからそのメリット、デメリットを経験しました。
メリットについては、早産で赤ちゃんが生まれた後どのような準備をしたらいいか、また生まれた後のリスクやなりやすい症状など、知識をつけたり、調べたりする時間がたくさんあったことです。一方デメリットは、出産まで時間があった分不安な時間が長く、精神的に不安定になりやすかったことでした。赤ちゃんが小さいかも…という指摘から入院するまで、不安定な気持ちと戦いながらも知識は得られたといいます。
その中でlalaさんは「ママが動きすぎると赤ちゃんに栄養が行きにくくなるかも」という情報を得たため、病休中はなるべく動きすぎないようにしていました。
「赤ちゃんのためにできることは本当に少なかったのですが、得た知識の中で赤ちゃんのためにできるだけできることをしよう!と思いながら過ごしていました」
今回、2度目の出産となるため、1度目の妊娠と比べて「本当にお腹が大きくならないので、常に不安はありました」といいます。また妊娠中、lalaさんも元気で赤ちゃんは小さくても最後まで元気で、特に自覚症状はありませんでした。
「通常、たとえば羊水が少ない、妊娠高血圧、血流に異常など、何かしら母子ともにSOSのサインが出ることが多いのですが、私の場合は稀なケースだと思います」
妊娠28週目に管理入院となり、退院の目途は「赤ちゃんを出産するまで」とのことでした。赤ちゃんがどれだけ成長するかで出産する時期が決まるため、長期入院の可能性が高く、上の子と離れて入院しなければならなかったことがつらかった…と話します。
「たまに面会に来てくれても、私と離れるときに泣いてしまう上の子を見るのがとてもつらかったのを覚えています」と当時のことを振り返りました。
そして赤ちゃんの体重はほとんど増えず、30週6日で通常より早く帝王切開に…。
「赤ちゃんの成長がゆっくりで小さくても、その子なりに成長していれば正期産できたケースもあるというお話を聞いていたので、とても残念な気持ちでいっぱいでした。一方で、出産となったことで肩の荷が降りた…という気持ちもありました。私のお腹の中にいる間は何も手助けをしてあげることができないからです。生まれてからは医療の力を借りて、成長の手助けをしてあげることができます」とそのときの気持ちを話してくれました。
帝王切開の手術中は、涙が止まらなかったというlalaさん。その心の中は「どうか助かってほしい」 その思いでいっぱいだったといいます。
娘さんへ「尊敬しかない…」
妊娠中は数々の困難を乗り越えてきましたが、出産時にもさまざまなことがあったといいます。それは同室の方がコロナ陽性だったため、lalaさんが濃厚接触者となり、隔離された状態の中で出産が決まったことでした。
コロナは陰性だったにもかかわらず、生まれた直後もその後も娘さんに直接会うことが叶わなかったのです。
「やっと会えたとき、悲観的な気持ちはまったくなかったです。とにかく『かわいい』『やっと会えたね』と本当に愛おしく、嬉しかったです」と話します。
娘さんは約3ヶ月間NICUとGCUで過ごし、たくさんの治療を乗り越えて退院。そして、周りと比べてゆっくりではあるものの少しずつ成長していきます。大きくなると、ハイハイではお兄ちゃんを「後追い」していたそうです。
現在2歳になる娘さん。体の使い方が上手で、寝そべってゴロゴロ回転することもできます。
lalaさんは、娘さんが想像より遥かに体の成長がゆっくりで、悩んだときがあったといいます。ミルクも飲めず、離乳食も食べられないこともありました。また嘔吐をしやすく、体調も崩しやすかったので、保育園に通えるとは思っていなかった…と話します。
しかし、現在では元気いっぱい笑顔で走り回り、楽しそうに保育園に通えるようになった娘さん。
「たくさんの痛みや困難を乗り越えてきた彼女には尊敬しかありません」とlalaさんは娘さんへの思いを語ります。
ハイリスクの妊婦さんにできるだけ情報をたくさん伝えたい
lalaさんは、自身の経験をSNSを通じて発信しています。
妊娠中、インターネットで検索をしても娘さんと同じような赤ちゃんの情報が少なく、なかなか必要な情報が得られませんでした。かろうじて、X(twitter)で同じような方を見つけることができ、ダイレクトメッセージで励ましていただいたり、 質問させてもらえたりして希望をもつことができたといいます。
また、不安な気持ちからネットサーフィンを続け、かえって不安になってしまうこともあったのです。
そこで「ハイリスクの妊婦さんにできるだけ情報をたくさん伝えたい」そして「その情報で、少しでも希望をもっていただきたい」という思いがきっかけとなり、ブログとSNSを始めました。
「娘が元気に踊ったり、お兄ちゃんとちょっと笑える行動をしたり、歩けるようになったり…そんな姿を見て、たくさんの人に希望をもっていただきたいと思いました」
娘さんは、オルゴールに人形をくっつけてくるくる回したり、メリーゴーランドの上にいろいろなものを乗せたり回して遊ぶなど…。子どもならではの発想で、たくさん遊んでいるといいます。
lalaさんはSNSで発信するようになってから「本当に多くの方からメッセージをいただきます。最近では双子のママさんが多いですね…!」といいます。
「発達の心配について」「離乳食がなかなか食べられない」 というご相談が多く、またご相談以外にも「ブログに出会えてよかった」「娘さんの姿を見て感動した」と感想をいただけることがあると話していました。
ブログやSNSを継続するのはなかなか根気がいることで「そろそろ引退かなと思うこともありましたが、1人でもこうした声をいただけると、この1人の方のためだけにでも情報を発信しようと頑張ることができます!」とその原動力について語ってくれました。
また娘さんは入院し、手術をすることもありました。その際に「たくさんの方からメッセージをいただき、とても驚きました。私が発信した内容をこんなにたくさんの方に見ていただいていたのかと本当に嬉しくなりました!」といいます。
今後の娘さんについては「とにかくゆっくりでいいので、彼女が人生を楽しんでいけるように見守っていきたい。そしてずっと笑顔でいられるように」と話します。
「これまでも医療や地区のサービスなど、周囲のサポートを受けながら成長してきて、これからもそうなると思います。たくさんの方のお力を借りながら見守っていけたらと思っています」
648gで生まれてきた娘さん。娘さんのように小さく生まれた赤ちゃんは、医療的なケアが必要だったり、体が弱く手術や入院が必要だったりするため「かわいそう…」と言われることもあるといいます。しかし、lalaさんは一度もかわいそうと思ったことはなく、たくさんの痛みや困難を乗り越えてきた娘さんを尊敬しています。
そして「全力で幸せにする」と決めているのです。
赤ちゃんが小さいと言われた妊婦さんや、ハイリスク妊娠で管理入院の妊婦さんを応援したいといlalaさんのブログやInstagramには、経験したからこそ役に立つ情報や、不安な気持ちを乗り越えてきたことなどがたくさん詰まっています。
こうしたlalaさんの発信は、妊娠中や出産後などに不安を抱えているママさんたちへの大きな支えや力となるでしょう。