出産後…わが子に違和感。その後、医師「1歳まで生きられないかもしれない」判明したわけとは

出産後…わが子に違和感。その後、医師「1歳まで生きられないかもしれない」判明したわけとは

お母さんが切迫早産となり、3ヶ月の入院後誕生した蒼斗くん。
生まれたときから腸回転異常症とそれに伴う中軸捻転という病気を患っていたのです。そして、生後3日目と4日目の手術を経て小腸は5cmとなり「短腸症候群」という状態であることを告げられました。
一般的な小腸の長さは、新生児で1.5~2m、成人で4~6mあると言われていますが、蒼斗くんの小腸は5cm。

「1歳まで生きられないかもしれない」と言われた蒼斗くんは、これまでに13回の手術を乗り越え、現在3歳です。
「蒼斗の病状について詳細な情報を発信することで、閲覧した方が少しでも励まされるよう活動します!」と、ご両親は蒼斗くんのことをSNSで発信しています。

ご両親にSNSで発信していく思いや、どのように乗り越えてきたのかなどを聞きました。

※腸回転異常症…子宮内での発生過程において腸管が腹腔内の正常な位置に収納されなかった状態。
※中軸捻転…腸が正常な回転をせず、腹腔内で捻じれてしまう疾患。
※短腸症候群…腸管を大量に切除したため、消化吸収機能が極端に低下した状態。

腸の大部分を切除し小腸が5cmに…

蒼斗くんは、生まれて次の日から母子同室になりました。しかし、その日からずっとミルクを飲めず吐いてしまうことが続き、夜寝る際心配だったお母さんは、看護師さんに預かってもらうことにします。

その後、急に調子が悪くなり、NICUに移動したとの連絡を夜中に受けました。

管に繋がれている蒼斗くん(aoto08162348さんより提供)

次の日NICUに、蒼斗くんの様子を見に行ったご両親。そのときにはお腹が黒く、点滴もたくさん繋がれており、変わり果てた姿だったといいます。原因がわからないため「お腹を開けて直接見て原因を探しましょう」と医師から伝えられたご両親は唖然…。

そしてお腹を開けた結果、中軸捻転を伴う腸回転異常症という病気が見つかりました。蒼斗くんの小腸には血液が通っておらず、小腸の95%が壊死していたのです。
小腸の回復を見込み腸の状態を整えますが、翌日の手術で改善は見られなかったため腸の大部分を切除し、小腸は5cmに…。医師から「短腸症候群」という状態であることを告げられました。

蒼斗くんの腸について(お父さんtayaさんのブログより提供)

左は通常の腸管の配置で、紫の部分は壊死してしまった小腸。真ん中は1度目の手術の後の状態で腸を整復させて、血流再開を期待しましたが改善は見られず。

医師から「短腸症候群」であることを告げられたとき「蒼斗が生きていけるのかという不安もあり、現実を受け止められませんでした」とご両親は振り返ります。

生後8か月の蒼斗くん(aoto08162348さんより提供)

腸が短い蒼斗くんは栄養のほとんどを点滴から賄っており、点滴を入れるためにカテーテルを挿入しています。
カテーテルを使用していると、カテーテルにばい菌が入って体調を崩してしまったり、固定するためのテープで肌荒れを起こしたり、掻いてしまったことにより抜けてしまうなどのトラブルが多いです。

カテーテルの扱いが非常に難しいと感じている…とご両親。また腸が短いため水分が吸収されず、常に下痢をしている蒼斗くんは、オムツ漏れやお尻が荒れてしまって痛がることも多いといいます。

「カテーテル管理と下痢のコントロールに頭を悩ませている」とご両親は話してくれました。

「1歳まで生きられないかもしれない」と言われた蒼斗くん

病気について、Instagramやブログなどで発信しようとしたきっかけは、ご両親の地元の病院では短腸症候群の症例自体も少なく、蒼斗くんほど腸の短い人はネットで調べてもほとんど見つからずに困っていたことからでした。

「発信をしていくことで、目に留まった方から有力な情報が得られるかもしれない、 同じ病気を持った方との繋がりを持てるかもしれない、 同じような状況の方が少しでも励まされればいいなと思ったからです」と語ります。

また、日本で承認されていないお薬を海外から輸入することもあり、この病気が認知されることで日本でも承認されるのではないかという思いも込められていました。

歯が生えてきた生後9か月(aoto08162348さんより提供)

発信を続けるうちに投稿に対して多くのコメントが寄せられ、ご両親の思いは届き、現実になっていきました。

「たくさんの方に蒼斗を知っていただいて、褒めていただくことや励ましていただくことも多くあり、嬉しく思っています! 実際に同じ病気を持った方と繋がることもでき、いろいろ教えていただいたり、協力してくださる方が増えたりして発信してよかったなと思っています!」

1歳のお誕生日(aoto08162348さんより提供)

蒼斗くんは「1歳まで生きられないかもしれない」と言われていました。それでも蒼斗くんは、これまでにどんなにつらいことがあっても常に笑顔を絶やさず、3歳のお誕生日を迎えることができたのです。

2歳のお誕生日(aoto08162348さんより提供)

そんな蒼斗くんに救われていると語るご両親。Instagramのプロフィールに「閲覧した方が少しでも励まされるよう活動します」と書いたきっかけには「蒼斗の笑顔にはパワーがあると感じているからです!」という思いがありました。

ご両親とお姉ちゃんの願い

蒼斗くんは現在3歳になり、いつも笑顔を絶やしません。

3歳の蒼斗くん(aoto08162348さんより提供)

生まれたときには、いつ急変してもおかしくない状態だったため、病院から電話がくるのではないかと怯える毎日だったというご両親。3歳になった今の変化について聞いてみました。

「いつ亡くなってもおかしくなかったときから一変して、今は元気に過ごせています。カテーテルのトラブルや不安もありますが、大阪へお引っ越しをしたことで信頼できる先生にすぐに診ていただけるのは心強いです。また毎日笑顔の蒼斗を見て、この子は強い子だと自信を持っています」

2022年に初めて大阪大学医学部附属病院を受診した蒼斗くん。しばらくは遠くから通ったり、入院をしたりしていたといいますが、2024年大阪に引っ越しを決めました。

さらに来年、大きな手術をする予定になっています。生まれてから13回もの手術を乗り越えてきましたが、今までの手術より難易度が高く、入院期間も長くなることが予想されます。

その手術がうまくいき「元気になること、ご飯が食べられるようになること、腸が長くなってくれたら嬉しいな…」というのが、ご両親とお姉ちゃんの願いです。

それは蒼斗くんのことを知っている、みんなの願いでもあります。これまでにたくさんの手術を経験し、痛いこと、苦しいこともあったでしょう。それでもいつも笑顔で、周りの人を元気づけてくれる力があると感じました。ご両親の言うとおり、蒼斗くんの笑顔にはパワーがありますね。

「短腸症候群」という病気について聞いたことがない方も多いでしょう。ご両親が発信しているInstagramやブログから病気についてたくさんの方に知ってもらい、そして、蒼斗くんの手術がうまくいくことを願っています。

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