指先ふくらんだ「バチ指」の美容師 ”周囲と違う特徴は、時に武器になる” 中傷受けてもSNS発信続ける理由 #令和に働く

指先ふくらんだ「バチ指」の美容師 ”周囲と違う特徴は、時に武器になる” 中傷受けてもSNS発信続ける理由 #令和に働く

美容師の吉田彰吾さんは、難病により指先がふくらむ「バチ指」をSNSで投稿したことで注目されています。幼少期に「他の人とは違う」と気づき、自身の個性を受け入れられなかった吉田さん。心無い言葉をかけられた経験もあったなかで、その後のSNSでの発信や出会いでどのように心が変化し、コンプレックスと向き合い、受け入れることができたのか本人に話を聞きました。

違和感に気づいた幼少期

吉田さんが元々患っていたのは「肥厚性皮膚骨膜症」という難病。皮膚が厚くなりしわが出たり、指先がふくらんだりする(ばち状指)ものでした。

同じバチ指の方と(@yoshida_bachiyubiより提供)

違和感を抱いたのは小学生の高学年の頃。手のデッサンを描く授業のときでした。
「自分は絵が得意だったのに、なぜか自分の手の模写は上手に描けなかったんです」指から先の形が他の人と違うことに初めて気がついた瞬間でした。

その後、病院で「肥厚性皮膚骨膜症」という難病だと診断を受けます。
手の形状が人と異なることで、不快がられるのを恐れていた時期もありました。

また、吉田さんは倦怠感を抱きやすいこと(関節がきしむような感覚があり、体を動かすのが重たい。微熱などを引き起こしやすい)、針の穴に糸を通したりページをめくったりなどの細かい作業が苦手なことが現在の悩みだといいます。

バチ指を前面に発信 仕事に好影響も

吉田さんのSNSの投稿で印象的なのは、大きな爪を活かしたネイルの数々。
「バチ指は、人より爪が大きいことと、丸みがあることが特徴です。僕にしかできないネイルをしたら面白いのではないかと思い立ち、投稿を始めたのがきっかけです」

吉田さんのバチ指ネイル(@yoshida_bachiyubiより提供)

そこで、バチ指を知らない人が多くいることをSNSを通して知った吉田さんは、周知活動にも繋がると思い、あえて目を引くようなネイルデザインを考えているといいます。
ネイルとしては、丸みのある形状を活かすところを特にこだわり、多くの人が楽しく感じられるデザインを意識しています。

ネイルを見て、コンビニや電車などで声をかけられたりすることもあるようで、子どもにも人気です。

しかし、思春期の頃は、見た目のインパクトに対して心無い言葉を受けることが多かったといいます。その度に心にダメージを受けていたのだとか。

その後、高校1年生になった吉田さんは「自分の指をネタにできた方が面白いんじゃないか?」という思いを抱くように。
「この指でいる以上は、いろいろ言われることは避けて通れません。その度に嫌な顔をしていては自分も相手も面白くないと思い、逆に笑いのネタにするようになりました」と、ポジティブに考えたことが、吉田さんにとっていい方向に人生が進みだします。

吉田さんは現在、美容師として活動しています。
ネイルが注目されるようになると、バチ指を活かしグッズを販売し、美容院でもバチ指ヘッドスパなど個性を活かして活動するように。

バチ指ヘッドスパ(@yoshida_bachiyubiより提供)

初投稿に多くの賛否 発信のきっかけに

SNSでの最初の投稿で吉田さんは、TikTokに「同じ指の方はいますか?」と文章を添え、簡単な動画を投稿しました。
興味本位だったといいますが、この動画があっという間に100万再生を超え、多くのコメントをもらったんだとか。

内容は、指に対しての疑問や驚き、誹謗中傷など、さまざまでした。
このできごとをきっかけに、本格的に発信を始めることに。
「コメントを見てバチ指を知らない人が多くいる事を知りました。沢山の人にこの指のことを知ってるもらうために、バチ指や持病に対する周知活動をしようと決めました。」
体にコンプレックスを持つ方々を勇気づけるような発信に変え、あえて指を全面的にアピールして投稿するようになります。

つまようじをとる様子(@yoshida_bachiyubiより提供)

吉田さんと同じ病気を持つ人は珍しく、日本に100人もいないんだとか。その内の3人とDM、対面含めコンタクトを取ることができました。

「コンプレックスを持っている人が『勇気づけられた』と言ってくれることもあり、ポジティブな反応をたくさんいただくことができました。僕としても、バチ指を生かしたヘッドスパをSNSで発信することで、他県からお客様が来てくださるようになりました。仕事にもいい影響をもたらしています」

バチ指ネイルの様子(@yoshida_bachiyubiより提供)

見た目で悩む人へ 伝えたい思い

自らの体験を通して「周囲と違う特徴は、時には武器になる」と気づいた吉田さんですが、容姿などで悩む人には「それぞれが生きやすいスタンスを見つけてほしい」と力を込めます。

「例えば体の一部にコンプレックスをお持ちなら、その部分を隠すのもありだと思うし、整形などで形を変えるのとありだと思う」
人によってメンタルの強さはそれぞれだとしたうえで、とにかく自分自身を卑下しないですむことが大切だと訴えます。

バチ指を活かした活動が実を結び、念願叶って自分の美容室を出すことが決まったという吉田さんですが、今後もあえてバチ指を個性として打ち出し、さまざまなことにチャレンジしていくつもりです。

「僕が『この体だからこそできたこと』を成功体験として発信することで、体にコンプレックスを持って何か挑戦することを恐れている方に、ポジティブな空気感を伝えていきたい」

吉田さんの挑戦は続きます。

※この記事は、ほ・とせなNEWSとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。
出典:難病医学研究財団/難病情報センター『肥厚性皮膚骨膜症』

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