自閉症スペクトラムと知的障害という特性があるあられちゃん。
発語がなく、自分の思いを言葉にして表現することができません。
そんなあられちゃんが、4歳になり幼稚園のお誕生会に参加。お誕生月のお友達がインタビューに答える中、主役の1人であるあられちゃんがとった行動とは?その様子を見るおじいさんを動画に収めた投稿には「涙がでました」「私も勇気を貰いました」「暖かいご家族」などのコメントが寄せられています。
あられちゃんの母親である平山さんに、普段のあられちゃんの様子と平山さんが代表を務める「みんなのわ いっぽいっぽ」の活動について話を聞きました。
あられちゃんの障がいと大好きなおじいさん
あられちゃんは、現在4歳になる優しくて料理が大好きな女の子です。おうちではいつも陽気で、家族を笑わせてくれる存在だといいます。
自閉症スペクトラムと知的障害という特性があるあられちゃんは、1才のときには20語話すことできましたが、1歳半のときに言葉が消滅。現在は発語がありません。普段は言葉の代わりに絵カードや指差しを使い、周りの人と意思の疎通をはかっています。
そんなあられちゃんには、赤ちゃんのときから懐いている大好きなおじいさんがいます。母親の平山さんから見ると、ちびまる子ちゃんの「まるこ」と「ともぞう」のように見える、とても微笑ましい関係の2人。
おじいさんは『失敗』することでとても落ち込んでしまうあられちゃんを理解し、あられちゃんのペースに合わせて対応してくれます。あられちゃんががんばっている姿を真近で見守り、孫と一緒に踊るためにダンスの特訓までする、優しいおじいさんです。
幼稚園のお誕生会
家族に見守られ、たくさんの愛をうけて育っているあられちゃん。
そんなあられちゃんが幼稚園のお誕生会に参加することになり、4歳になったあられちゃんは、このお誕生会の主役の1人です。
この頃のあられちゃんは一言も話すことができず、もちろん幼稚園でも一度も声を出したことがない状態でした。
お誕生会では、その月にお誕生日を迎えるお友達がインタビュー形式で先生からの質問に答えていきます。あられちゃんのインタビューはどのようにしようか、幼稚園の先生も悩みました。
ところが、練習でみんなと同じようにインタビューをしてみたところ、あられちゃんが一生懸命口パクで、自分のことを伝えようとしたのです。
お誕生会本番、大勢が見つめる大舞台であられちゃんは口パクで堂々と発表することができました。
その姿に、平山さんとあられちゃんのおじいさんはとても感動し、お友達から刺激を受けながら大きく成長していることを実感したといいます。
お誕生会という舞台を経験し、ますます成長しているあられちゃん。
母親である平山さんは「これから先も今と変わらず優しい子に育ってほしい。好きなことにどんどん挑戦して、あられの人生が笑顔で溢れるようになってほしい」と、自分があられちゃんのがんばる姿に勇気をもらっているように、周りの方にも勇気を与える存在であってほしいと話します。
SNS発信について
平山さんのSNS投稿には、同じように自閉症のお子さんを育てる家族からのコメントが多く寄せられています。共感や応援の声が多く届く中、子育てする上で心無い言葉をかけられてきたという方との出会いもありました。
「自閉症だからということではなく、世の中すべての育児をする保護者の方、これから育児をされる方が、安心して子育てできる世の中になればと思います」
平山さんはそんな思いを胸に、SNSでの発信を続けています。
平山さんは自閉症のお子さんを育てながら、自閉症や障がいがある子どもはどういう特性なのか、という周知がまだ足りないと感じます。
「悩みごとがあってもどこに相談していいかわからない」という保護者の方も少なくありません。こういった保護者の方への配慮が足りていないのは、自閉症などへの理解がないからではなく「どういう特性か」という周知が足りないからだと言います。
そんな方が1人で抱え込んでしまうことがないように、自閉症に関する周知活動を行っていきたいと語ってくれました。
「みんなのわ いっぽいっぽ」
平山さんは「みんなのわ いっぽいっぽ」という団体を姉妹で設立し、月に1回座談会を開いたり、子どもたちの作品を出展したりしています。
実際に自閉症の子どもを育てている平山さんと、平山さんのお姉さん。子育てをしているなかで乗り越えてきた困り感や子どもの対応の仕方について、全国規模で講演の依頼も受けつけています。
団体として集まった声を市に提案すること、悩みの糸口が見つかる場所としてオンラインサロンを立ち上げることも今後考えていると話す平山さん。
これらの活動すべてはボランティアとして行っているため、金銭面での制限がかかってしまうことから、現在はクラウドファンディングで資金を集めています。
世間では最近になって「合理的配慮」が義務化されました。病気や障がいへの知識がないと、理解、配慮は広がりません。知識がないために「この子は自閉症ではない」「躾がなってない」「もっと厳しく育てるべき」という意見を、平山さんは直接受けた経験もあるといいます。
「知ってもらうことで当事者への配慮につながったり温かく見守ってもらうことができるよう、自閉症スペクトラムについての周知活動を続けていきたい」
「子どもたちが大人になるとき、今よりも生きやすい社会が作れていることを目標に、いっぽいっぽ進みながら活動していけたら」
そう平山さんは話します。
子どもたちが安心・安全に暮らしていける社会にしていくために、平山さんの活動がこれからも広く知られ、誰もが生きやすい世の中になっていきますように。