子どものころの記憶で、鮮明に覚えていることはありますか。
とても嬉しかったこと、驚いたこと、怖かったことなど色々とありますよね。今回は、子どものころのケガにまつわる思い出のエピソードを紹介します。
イラスト:チッチ
ケガで動けなくなってしまい…
ケンジさん(仮名)が小学校低学年のときに家族でいったスキー場でのお話です。ケンジさんはお母さんと2人でスキーを楽しんでいました。
しかし、コースの中盤で大きく転倒し、雪にスキー板が突っ込んだ状態から動けなくなってしまいました。
ケンジさんは足を痛めてしまい、お母さんが助けだそうとしましたが1人では動かすこともできず、周囲に助けを求めました。
コース途中の坂だったこともありなかなかスキーヤーに立ち止まってもらえず20分ほど過ぎた頃、やっと1人の男性がスキー板を止めて近づいてきてくれました。
お母さんから事情を聞いた男性は、ケンジさんをスキー板がついたままのいわゆる「お姫様抱っこ」で抱きかかえ、救護センターまで運んでくれたのです。
お母さんはお礼を伝え、名前や住所を尋ねましたが、男性は「当たり前のことをしたまでです」とすぐに立ち去っていきました。
ケンジさんはその日のうちに病院で診察を受け骨折していたことがわかりました。
損得より人のために
現在、あのときの男性と同じくらいの年齢になり「一層心より尊敬します」と話すケンジさん。詳しく話を聞いてみました。
ー助けてもらったとき、相手に対してどう思いましたか?また、なんと伝えましたか?
そのとき痛みと骨折で発熱も始まっていたと思うので、ほとんど男性と話すことはありませんでした。
男性は私を「もう少しだから頑張ってね」と励ましてくれていた気がします。病院で治療を受け回復していくうちに、その男性に「ありがとう」という気持ちが湧いてきたことを覚えています。
ーこの体験を通して、何か意識していることや気持ちの変化などはありましたか?
現代社会では割り切って考えていかないといけないことがたくさんあるような気がします。しかし人を助ける気持ちだけは割り切る必要がないと思っています。自分の手の届く範囲であれば困っている人に手を差し伸べていきたいです。
ーこの経験を誰かに話したことはありますか?ある場合、どんな反応や返答がありましたか?
妻にこの話をしたら「損得を考えずに動ける人が一体どれくらいいるんだろうね」と感銘を受けているようでした。
幼いケンジさんにとってはケガをした痛い思い出でもあり、男性の颯爽とした姿は忘れられない思い出になったのではないでしょうか。人を助けるという行動は、簡単にできることではありません。小さい頃に憧れたヒーローのようにとまではいきませんが、些細なことでもできることから積極的に行動し、子どもたちから見てもカッコいい大人でいたいですね。
※こちらは実際にユーザーから募集したエピソードをもとに記事化しています。