子どもを連れてのバスや電車の利用は大変です。いつ機嫌が悪くなってしまわないかドキドキすることもあるでしょう。
今回紹介するのは「電車のなかで子どもが大泣きしたときに助けてもらったこと」についてのエピソードです。
イラスト:チッチ
電車のなかで大泣きしてしまった息子
ある夏の日、サチエ(仮名)さんは、2歳の長男リクト(仮名)くんと電車に乗ることにしました。そのときのリクトくんは機嫌が悪かったため、電車に乗れば少しは機嫌がよくなるかもしれないと思ったからです。電車好きのリクトくんが電車で喜んで機嫌がよくなれば、サチエさんは楽ができるとも思っていました。
しかし、お昼寝が浅かったリクトくんは、まさかのグズグズタイムに入ってしまったのです。そしてついにギャン泣きスイッチが入り、どうしようもない時間帯に。せめてこの泣き声が少しでも小さく聞こえるように、リクトくんにフードを被せたり、窒息しないよう細心の注意を払いながらもハンカチで口を押えたりと必死なサチエさん。
すると、なぜか急にリクトくんは泣き止み、キョトンとしたのです。不思議に思ったサチエさんがリクトくんの目線を追ってみると、初老の女性が可愛らしいインコの指人形であやしてくれていました。
最寄り駅に着いたのでお礼を言って降りようとすると、その女性は「はい」とリクトくんに指人形を渡しました。リクトくんはもちろん大喜びで、それまでのギャン泣きはどこへやらという状態になりました。
頼れるときは頼りながら…
このときの出来事について、サチエさんに話を聞きました。
ー助けてもらったとき、相手に対してどう思いましたか?また、なんと伝えましたか?
ありがたいという思いです。私が泣きそうになってしまい、ひたすら「ありがとうございます」を繰り返している状態でした。正直、パニックでしたし、このありがたさをうまく言葉で伝えられなかったことは後悔しています。電車でお別れしてしまったので、電車の窓越しで手を振ったのが最後でした。しかし、その人の優しい声と笑顔は鮮明に覚えていて、心の豊かな方なんだろうなぁと思います。またきっと、どこかで子どもを助けているんだろうなぁと今でも思います。
ー公共交通機関で子どもが泣いてしまうなどの状況において、子育てならではの大変さを感じることを教えてください。
おやつやおもちゃなど、万全の準備をしても公共交通機関でギャン泣きスイッチが入ってしまうことはあるので、完全な対応策がないのが大変だと思います。このようなときに、周りの方には笑顔でいてもらえると、怒っていないなとわかるので嬉しいです。子育ては努力すればするほど、予定外の方向にいって努力が無駄になることはしょっちゅうです。努力しなければいいのですが、つい何とかならないかともがいてしまいます。それでも子どもがかわいいのは確かで、そこに救われている自分がいます。
ーこの体験を通して、何か意識していることや気持ちの変化などはありましたか?
自分が焦ると子どもは余計に泣くので、自分に「落ち着いて、落ち着いて」と言うようになりました。
ーこの経験を誰かに話したことはありますか?
夫に話しました。「泣きそう!」と言っていました。夫も息子に電車でギャン泣きされたことがあるので、困る気持ちがわかるからです。
ーこの経験を通して、同じような状況で悩む方にどのようなことを伝えたいですか?
子どものスイッチが入るとどうにもならない、こちらもどうしようもない状態は誰しも経験すると思います。嫌な対応をする人もいるかもしれませんが、必ずしも全員でなく、むしろご理解のある人の方が多いので、頼れるときは頼りましょう。
子どもを連れて公共交通機関を利用し、周りの目が気になってしまったという経験のある人は多いかもしれません。しかし、周りには温かい気持ちで見守ってくれている人もいるでしょう。
※こちらは実際にユーザーから募集したエピソードをもとに記事化しています。