先天性四肢障害とは、生まれつき手や足・耳などの形が多くの人とはちがう、あるいは欠損している状態のことです。
むろい のぞみ(@guuuu_non)さんは、「右手五指欠損」という右手の指が欠損した状態で生まれました。むろいさんは、Instagramで日常の様子や生活の工夫などについて発信しています。
むろいさんに、右手のことやInstagramでの発信などについて詳しい話を聞きました。
障がいについてもっと知ってもらいたい
むろいさんが右手五指欠損になってしまった理由は、お腹の中にいた際に、手の成長過程の途中で臍の緒が絡まってしまい形成不全を起こしたのではないかと言われているといいます。
むろいさんは、「お腹の中での体勢が影響したり何らかの出来事があり起こる障がいであるため、病気・遺伝ではなく誰にでも起こり得る障がいなのではないかなと思います!」と話してくれました。
ーSNSでの発信をしようと思ったきっかけを教えてください。
大学の福祉学科に通っていたとき、実習で発達支援を行いました。そのなかで障がいをもっている子の親と多く関わりました。保護者の方々は、子どもの将来についての不安などの悩みを、先生だけでなく実習生の私にも相談してくれたのです。そこで、困っている方たちに何か発信できればと思っていましたが、勇気が出ずになかなか発信できていませんでした。
あるとき、障がいをもつ方のモデルオーディションでグランプリを獲ることができ、大勢の人の前で自分をプレゼンテーションする機会がありました。そのときに、自分について話し、殻が破れたことで発信を始めました。
それまでは、みんなに見られて恥ずかしいと思い、自分の障がいを受け入れることができていませんでした。しかし、オーディションを通して「意外といけるかも!」と思ったのです。
高校生くらいまでは健常者の方と交って生きていくことが多く、どうしても写真にふと映ったときに「あっ」と思ったり、体育の授業で支援が必要なことがあったりしました。周りもどう接したらいいのかわからない状態で、障がいについても周りから聞かれることはありませんでした。それが生きづらいと感じることもあり、悩んだ時に相談できる場所があればいいなと思いました。
障がいが当たり前ではない社会で気を使われているのが分かると、それをどうにか変えたいと思いました。私は相談はよく親にしており、相談ができる友達はいませんでした。そのため、障がいが当たり前になればもうちょっと周りも助けやすいのかなと感じたのです。
ーSNSでの発信を始めてから何か変わったことはありましたか?
始めたのは2021年からです。自分に自信がなく、発信する内容の正解がわからなかったですが、発信している中で、同じ障がい持っている子の親からメッセージをもらうことが増えました。片側麻痺の人から「参考にしています」などのコメントがくることもあります。健常の方からは「こういう障がいあるの初めて知った!」っていうコメントがくることもあり、 もっと知ってもらいたいと感じるようになりました。
コメントをもらうことで自信につながり、自分の手もみんなの前で出しやすくなりました。しかし、障がいもってることを受け止めきれたわけではなく、周りの目が気になって落ち込むときは結構あります。落ち込んだときは、自分で自分の機嫌をとれるようにしています。初対面の方だとびっくりされやすく、相手の聞き方に戸惑ったり、どう答えようかと迷ったりすることもありました。
できるのに「できない」と言われる悔しさ
ー現在明るく前向きな発信が多く見受けられますが、発信するまで大変だった経験などはありましたか?
就職やアルバイトで雇用してもらうのが大変でした。大学生でアルバイトを始める際、なかなか受かりませんでした。事前に障がいがあること、できることも伝えたものの、一方的にできないと思われることが多く何回も落とされました。その経験が、手(障がい)のことを拒否された初めてのことでした。それまでは、手のことで受け入れられないことはなかったので、衝撃的でした。できるのにできないと言われるのが悔しかったです。
目の前で「できないでしょ」と言われて泣きながら帰ることもありました。アルバイトに落ちたことで就職さえも危ういのかなと思い、その悔しさから何回も受けて、スーパーの品出しで雇ってもらえることになったのです。