国内でも世界でもアトピー性皮膚炎に悩む人はとても多い。患者数は国内では、45万人と推計されている(厚生労働省 2017年患者調査)。その症状の辛さは本人にしかわからないだろう。
沖縄県の石垣島で暮らす松浦卓宏(たかひろ)さんも、アトピーに悩まされる一人だった。彼は現在、石垣島でマリンスポーツのレインボーリーフ石垣島、宿泊施設のレインボーフォレストを妻の麻里さんとともに運営する。
海に入ると肌の調子が良くなった
アトピーについて発症した時期を尋ねると、
「気づいたら、小学生の時には発症していました。とにかく痒いし、四六時中かきむしり、肌が、ぐじゅぐじゅの状態。症状がひどいときは、強いステロイドをぬり、軽い症状のときには弱い薬というように数種類を使い分けてました」と当時を振り返る。
思春期になると服に血が付着しているのがわからないよう、黒い服ばかり着ていたという。
「中学生まではステロイドをぬると、翌日にはぐじゅぐじゅの箇所に皮膚ができて再生してました。すごいなあ、魔法の薬だ!!って思ってました」
21歳の頃、近場の海で泳いだときに、肌が1週間くらいしっとりしていたことを感じた松浦さんは、「海に入るとアトピーが良くなるのかな?」と思い始めた。元来、海が好きで、よく泳ぎに行っていたという。
そして25歳になったときに、海好きが高じ、ダイビングインストラクターになることを目指してオーストラリアのパースに渡り、スキューバダイビングライセンスを取得。その後、ケアンズのダイビングショップでインストラクターとして働いた。
オーストラリアに移住している間は、東京の病院で処方された蜂蜜入りのアトピー用の薬を持参。症状が出たときに、時々塗っていたという。しかし、「海に入ることで肌が調子が良くなったんです。だから薬は必要ないな、ってやめてしまいました」と微笑む。
自然とともに暮らす
その後、石垣島のダイビングショップでスタッフを募集していることを知り、応募。採用となり、2007年に帰国し、石垣島に移住した。ダイビングショップのインストラクターとして働きはじめたという。6年ほど働いたのちに、2013年、独立して現在のマリンスポーツの店、レインボーリーフ石垣島を立ち上げた。
さらに5年前には、石垣島で山を購入、自宅を建築し、大工の職人とともに自らも建築を手伝った。同じ敷地内に昨年5月、2棟の宿泊施設を建築して、レインボーフォレストと冠した宿泊業も始めた。
予約をしてきたゲストを連れて、ダイビングやスノーケルで大好きな海に入り、毎日の生活を楽しんでいる。
現在のアトピーの症状について尋ねると、
「症状は出ないですね。ホコリのアレルギーはあるので、そんなときは、あせもみたいにはなりますが、長引くことなく軽い症状で治ります」と話す。
アトピーの治療、治癒のきっかけは人によって異なるなか、彼の場合は、海水が肌質、アトピーの状態に合ったのかもしれない。
海は、彼にアトピー治癒のきっかけを作り、大きな恩恵を与えてくれた。仕事を通じても海の存在は、彼にとって大きく計り知れないものだろう。生まれ育った東京を離れ、自然と共に暮らす石垣島は、彼には最高の桃源郷なのかもしれない。