香川のポツンと山小屋 初めは夫婦の休憩所、次第に人が集う場に

香川のポツンと山小屋 初めは夫婦の休憩所、次第に人が集う場に
山地洋子さん

香川県丸亀市に木のおもちゃと絵本を扱う「ウーフ」という店がありますが、まんのう町には「山のウーフ」があるのをご存知ですか?
ウーフを立ち上げた山地洋子さんが、お山に作ったみんなの居場所です。音楽会や蕎麦打ち体験、お話会など、さまざまなイベントが催されている山のウーフを訪れ、山地さんに話を聞いてきました。

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3000坪という広い敷地には、もともとあった柿の木のほか、スモモやタイサンボクなどが植えられ、山の果物や山菜、野いちごや薬草などが自生しています。

ここは山地さんが幼いころから慣れ親しんだ場所。小学校から帰るとランドセルを家に置いて、おじいちゃんやおばあちゃんが畑仕事をしているこの場所によく来ていたそう。

「果樹のお世話を手伝ったり、隠れ家を作ったりして遊んでいました」

しかし、手入れをする人がいなくなると、瞬く間に荒地になってしまいました。そこを夫とともに手入れをしたことで、この素敵な場所が誕生したのです。

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自分らしさを探して

山地さんの道程にはいつも“心の解放”というテーマがありました。

「厳格な父に育てられ、親のいう通りに生きてきました。進学や就職などの重要な人生の選択は親に勧められるまま。でも30歳のとき、ふと私ってなんだろうと思ったんです。そこから自分探しの旅が始まりました」

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保育士として働いていた山地さんでしたが、クレヨンハウスの落合惠子さんをはじめたくさんの人に会いに行き、刺激を受けました。

「会う人ごとに、いろんな自分がいることに気づいて……。この人と会っているときの自分は好きだなというふうに思いながら“自分らしさ”を探していたのかも。会う人みんなが“自分の人生を生きている”っていう感じがして眩しかったし、私もそうなりたいって強く思いました」

そんな山地さんが退職届を書くまでにそう時間はかかりませんでした。このとき、はじめて父親に何も言わず退職届を出します。山地さんが自分の人生を自分の足で歩み始めた瞬間でした。

自分探しの旅の答え合わせのよう

そして立ち上げたウーフは、木のおもちゃと絵本の店です。

「昔の保育現場はおもちゃといえばブロックなどが中心で一斉にみんなで遊び、終わったら歌に合わせてみんなでお片付け。個々の発達に合わせたおもちゃが少なかったように思います。でも、私が勤めていた保育園では木のおもちゃを導入してくれたんです。そしたら子どもたちの反応がこれまでと全然違って、キラキラ、ワクワクしていろんな表情が見えるようになったり、ぐーっと遊び込むと促さなくても自分から片付けるようになったんです。おもちゃって大切なんだなって改めて思いましたね」

そんな経験も後押ししてくれたと話してくれました。

ウーフの名は「くまの子ウーフ(神沢利子作)」に由来しています。好奇心旺盛なウーフが自分なりの答えを見つけ出す物語です。その物語のひとつに「ぼくはぼくでできている」という言葉があり、その言葉こそ、自分探しの旅路にいる山地さんにとって核心をついた言葉でした。

「ほかにも昔から『秘密の花園(バーネット作)』のお話が大好きで、何度も繰り返し読んでいたんです。荒れた庭園を蘇らせていくことで、少女の閉ざされた気持ちが次第に解放されていく……。昔から好きな本でしたが、大人になって読み返すと、今の状況とリンクすることも多くて不思議な感覚になりました」

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人生の第四楽章のスタート

山地さんにとって分身のような愛着のある店ですが、両親の介護のためにウーフの経営は同じ思いをもつ人に譲り、仕事をリタイアした山地さんは実家へ帰ります。そして、介護のかたわら、夫とともに荒れた山を開墾しながら、休憩所を作りました。

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「最初は、畑仕事の合間にくつろげる場所があったらいいな、という考えで山小屋を作りました。まさかこんなに人が集まる場所になるとは思いませんでしたね。ただ、介護しながらどこかで社会とつながっていたいという気持ちはありました」

はじめは山地さん夫婦にとっての休憩所でしたが、しだいに景観に魅了された人たちが集まるようになりました。そして、この場所を「山のウーフ」と名付けたのです。そしてここを拠点に、山地さんの人生の第四楽章が始まりました。

「場所のもつ力ってすごいんだなと思いますね」と山地さん。今ではいろんな人から、ここでイベントをしたいという声が寄せられるのだとか。訪れる人にとっても、特別な場所になっているようです。

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「私自身、自然のなかに身を置くと元気をもらえるんですよね。それを来てくれた人も同じように思ってくれたらいいな。これからも今のままニュートラルにマイペースに。そして、この場所が誰かの役に立てるならうれしいですね」

山のウーフで行われるイベント情報は、山地洋子さんのフェイスブックやインスタグラムで発信されています。

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