サンフランシスコで留学エージェント「Educational Planning Inc. USA」を立ち上げ2021年で20年を迎えた長江美月さん。
今回は日本から遠く離れた異国の地で逆境に負けず、楽しみながら好きなことを仕事にできる秘訣を聞きました。
サンフランシスコに魅了された幼少期
子どものころ、サンフランシスコに1年間住んでいた経験があり、「またいつかアメリカに戻りたい」思いがあったと語る美月さん。サンフランシスコでは、子どもながらに別世界を見たと言います。
「自由に生きるアメリカ人を見て、日本にある校則や固定概念に息苦しさを感じていました」
サンフランシスコに戻って来た理由はこれまでの経験や交友関係だけでなく、大好きだからという思いがあるから。サンフランシスコには、「多様性」や「自分らしくいられる場所」があると言います。
「シリコンバレーのあるサンフランシスコだからこそ、チャレンジする人が多いのも魅力的です。リスクを恐れず、『リスクがあって当たり前』と考えている人が多くて。周りにチャレンジする人が多いのは、モチベーションが上がるし感化されますね」
さまざまな人種が暮らすサンフランシスコだからこそ、「特殊な街」を体現できていると美月さんは続けます。
人との関わりで生まれる「楽しさ」を伝えたい
しかしアメリカに行った当時は、英語が全くできなかったそうです。アルファベットがかろうじて読める程度だったため、次の日学校に行って「こんな宿題が出ていたんだ……」と驚くこともあったとのこと。
「それでも、現地の人と関わる中で英語が楽しいと感じ、自然と話せるようになりました。コミュニケーションの中で自分が英語を学んで楽しいと思った経験から、現地の体験を通して物事を学ぶ重要性を感じています」
今、留学プログラムの中に語学学校を含まず、ボランティアを入れているのも、現地の人と直接コミュニケーションが取ってもらいたいという思いが美月さんの中にあるからでした。
美月さんは、対面のコミュニケーションだからこそさまざまな感情が生まれると考え、生徒に「人との関わりや出会いの大切さ」を伝えたいと願い活動しています。
「人の心を追う」起業家ビジョン
「今でこそ留学事業を立ち上げていますが、もともと起業思考ではありませんでした。起業を決めた理由は、ビザのためです」
3年間働いていた留学会社と方向性が合わなくて、退職を考えた時のこと。
「退職に当たって転職活動を始めましたが、自分のやりたいことができる企業がありませんでした。このままだとビザを取れないので弁護士に相談したところ『君の場合は、起業か帰国だね』と言われて。(笑)」
その時に、「日本にはいつでも帰れるけど、帰るなら納得して帰りたい!」と思い、起業へのチャレンジを決めたそうです。
起業してさまざまな苦悩がありましたが、大変なこともプラスに変えて、自分の経験や肥しにしていると話してくれました。
「しかし、自分にはビジネスの才能はないと思っています。その中でも今ビジネスを続けられているのは、『人の心と向き合うこと』を大切にしてきからだと感じていて」
人の心を裏切ることさえしなければ、きっと上手くいくと考える美月さんの言葉には、「お金を追うのではなく人の心を追う」美月さんの人柄の温かさがあふれていました。
楽しみながら好きを仕事にする方法
「嫌いな仕事はしないと決めている」と語る美月さん。
「お金のために仕事を引き受けるかどうか考えるのではなく、自分の哲学や考えに合わないのであれば断りますね。自分で仕事を選んでいく気持ちを大切にしています」
生徒に対しても同様で、ボランティアが合わないと感じたり、事前資料を適当に準備してしまうような場合は断るそう。
「嫌で断る時には、相手にそう思った理由を伝えるようにしています。仕事では我慢しないことが大切だと思うので、自分の気持ちを表現することを忘れません」
クライアントさんとのやり取りも、生徒とのやり取りも問題解決を大事にしているそうです。「問題解決」が楽しく仕事をするために、重要な要素だと話していました。
「しかし、日本の社会ではまだまだ仕事に対して『楽しい』よりも『我慢』の方が多いと感じます。でも、自分の芯を持っていれば、どんな状況でも曲げられない意見が出てきて、我慢することが減ると思うんです」
良い悪いではなく「足りない部分」に目を向けて
「私はアメリカ生活が日本生活よりも長くなってしまいましたが、常に日本人でいることを忘れないように心がけています」
美月さんは、日本人である以上、日本に貢献したいという気持ちを持っています。そして生徒に対しては、サンフランシスコで学んだことを日本の将来につなげてほしいと願っています。
「日本が良い悪いではなく、日本に足りない部分を世界で見てほしいと考えています。何かが彼らの気づきになり、これから日本を担う若者達に将来を託す思いで接していますね」
また、最近は日本への提案や実行をより積極的に行っていきたいと思っているとのこと。
「これから日本を担う若者達の意識を変えていけるように、日本人が世界の人と対等にコミュニケーションが取れるように、現代の日本人に足りないものは何か意識しながら生きていきたいです」
美月さんの人生を語る上では欠かせない「人とのつながり」と「貢献力」。人との縁を大切に、今自分が世の中にできることは何か考え続ける美月さんだからこそ語れる思いがありました。
「日本が良い悪いではなく、日本に足りない部分に目を向ける」。肯定・否定で物事を決めつけるのではなくひとつの事象に向き合うことで、世の中はより良い方向に向いていくのかもしれません。