クリスマスといえばフライドチキン……のイメージですが、香川県にはスパイスの効いた濃い味付けが特徴の「骨付鳥」というご当地グルメがあり、クリスマスのチキン料理として食べる地元民もいます。
そんな香川県で骨付鳥を提供している人気店の1つが、高松市の商店街にある『寄鳥味鳥』。今年から新しい取組みとして、インターネットでの販売を行っています。そのきっかけは、コロナ禍のなか、テレビ番組に取り上げられたことでした。経緯について、チーフの亀山祐也さんに話を聞きました。
背中を押したテレビ放送
営業を続けて36年になる寄鳥味鳥。コロナ禍になる前は、香川県をあげて骨付鳥がPRされていたことや、瀬戸内国際芸術祭が開催されていたこともあり、観光客、とりわけ外国人が多かったそうです。
「コロナが広がる前までは、本当にすごいお客様の数でした。パッとお店を見たら半分くらいが中国の方だったこともあります」
店舗の1階部分が空いていて作業スペースもあったため、「ネット販売を始めた方がいいのではないか」という社員の意見は元々あったそう。しかし、当時は他の事に着手する余裕がない程、忙しかったといいます。そんななか、コロナ禍になりました。
「瀬戸芸が終わり、コロナがきてストンと売り上げが落ちました」
落ちた売り上げを補うため、ネット販売について検討していたちょうどその頃、全国放送のテレビ番組『バナナマンのせっかくグルメ』に、テイクアウトグルメとして取り上げられることになりました。これが背中を押し、「じゃあこのタイミングではじめてしまおう」ということで、急ピッチでネット販売の準備に移ったそうです。
想定外の売れ行き
テレビの放送は夜の時間帯で、インターネット販売を開始できたのは、なんとその当日の昼でした。放送後は北海道から沖縄まで、全国から注文が殺到し、約1500件、本数にして約1万本が売れました。当時は、何も分からないまま販売数を無制限にしていたそうですが、この売れ行きは想定外でした。
店舗営業を大切にしたいという思いを持ちながらも、配送が遅くなるのは迷惑がかかるという事で、いったん店舗営業を休んで対応することになりました。朝から従業員総出で1日700本~800本を焼き続けたといいます。
現在は注文数も制限していて、1日の売り上げは20~30本。このくらいが店としてはちょうどいいそうです。店舗営業の方が忙しくなってきて、ネット販売をやめようという話も出ましたが、全国で楽しみにしてくれている人のため、続けることにしました。
「購入してくれる方は何度も購入してくれるんですよ。メールやお手紙をいただくこともあります。そういう時に続けてよかったなと思います」
骨付鳥へのこだわり
味が辛い、濃いという人もいる骨付鳥ですが、寄鳥味鳥ではマイルドな味付けにしているので、女性や子どもの中には「ここだったら食べられる」という人も多くいるとのこと。
焼き方自体も何度も試行錯誤を繰り返しています。温度、時間、風量、蒸気の量、置き場所など、1回1回変えながらこだわってやっていることが、おいしさにつながっているといいます。
「焼くだけとよく言われますがめちゃくちゃ(気を付けていることが)あるんです」
亀山さんは、「36年続いてきたお店だが、これから10年15年残っていくお店にしたい」と話します。変わらない部分を残しながらも、少しずつ変化しながらお店を続けていくことを大事にしていきたいそうです。
コロナ禍とテレビ番組がきっかけで、新しい変化を見せた寄鳥味鳥。次はどんな変化をしていくのか楽しみです。