香川県高松市にあるコミュニティホテル&ホステル・WeBase高松。こちらで話題になっているのが、朝食バイキング。「ナスのパルミジャーナ」「アスパラの素揚げ」「豚の紅茶煮」など、豪華な響きのメニューが並びます。旬の野菜を取り入れた約40種類以上のメニューが、訪れる人たちのお腹を満たしています。
使用される一部の野菜は、総支配人の渡邉幸雄さん自ら育てて収穫したもの。メニューもできるだけ手作りにこだわり、スタッフが試作・試食を重ねています。
WeBase高松のこだわりの朝食バイキングと、総支配人が手がけた畑から“産地直送”された野菜たち。“生みの親”でもある渡邉さんに話を聞きました。
一日の始まりで大切な「朝食」を重視
2018年、渡邉さんは55歳の時に神奈川県から香川県へと移住し、新規オープンするWeBase高松の総支配人となりました。前職で培った様々なホテルでの勤務経験を生かし、スタッフと共にホテル運営に力を注いでいます。朝食バイキングについては、経験を積み重ねて今のスタイルになったといいます。
「レジャーでもビジネスでも、重要な要素になるのは朝食だと考えています。若いスタッフたちが試行錯誤をしながら試作・試食を繰り返し、手作りのこだわりメニューもどんどん増えてきました。手作りなので、前日からの仕込みも大変です」
和食・洋食の定番品はもちろん、さぬきうどんをその場でゆでて食べる「セルフスタイル」を取り入れたり、世界の料理を提供したりするなど、ユニークな朝食バイキングのスタイルとなっています。
若手農家から刺激を受けて、自ら畑仕事に
渡邉さんが畑作業に携わるようになったのは、2021年4月のことでした。香川県まんのう町で活躍する若手農家と知り合い、定植・収穫・出荷を手伝ったことが、きっかけとなりました。
「それまで畑作業に携わることは一切なく、経験させてもらった収穫作業はとても楽しかったのですが、同時に『きっと楽しいだけじゃないのだろう』とも感じました。若い人たちの就農する姿を見て、素敵だなと感じました」
パワフルな若手農家に刺激を受けた渡邉さん。その後、縁あって香川県三木町にある一反の畑を借りることになり、自ら畑作業を手掛けることになったのです。収穫した野菜は、ホテルの朝食で使われています。
「『畑作業をするなら、住まいは近い方がいい』と、三木町へ引っ越しました」
野菜が運べるという理由から、車もSUVから軽バンに乗り換えました。ホテルと畑までの距離は、車で約40分強。時間をやりくりしながら、2つの“職場”を行き来しています。
「最初は『本当にできるんだろうか』と不安でしたが、今は形になってきました」
畑の主や近所の人々に声をかけてもらったり、農作業に関する様々なことを教えてもらったりしながら、経験を重ねた渡邉さん。「初収穫の時は嬉しかったですね!」と喜びをあらわにします。
収穫の喜びを、朝食バイキングに注ぎこんで
畑で収穫を待つ野菜は、なす、レタス、キャベツ、とうもろこし、ねぎ、長ネギ、じゃがいも、さつまいも。種をまいた大根やかぶ、ほうれんそうの成長も、これからの楽しみです。ホテルの朝食で野菜を提供するためには、収穫を切らすわけにもいきません。渡邉さんは常に収穫サイクルを考え、天気の状態に気を配っています。
ホテルのスタッフも畑に赴き、収穫などの手伝いを行っています。メニューを考えるスタッフの要望で、育てている野菜もあるそうです。
「お客様からも、朝食バイキングで『サラダが美味しかった』と高評価をいただけるようになり、畑作業を行う励みになっています」
渡邉さんとスタッフは収穫の喜びを分かち合い、そのパワーは朝食のメニューへと姿を変え、訪れる人たちの「1日の始まり」を美味しく彩っています。
自ら土に触れることで、香川の食の魅力を「朝食バイキング」という形で還元している渡邉さんや、WeBase高松のスタッフたち。宿泊者でなくても朝食バイキングを楽しむことができるので、「地元の方にもぜひ楽しんでもらえたら」と語ってくれました。