「祝福のワッ」
岡山県倉敷市の畑の真ん中でみんなが声をそろえる。いや、心をそろえると言うほうがもっとしっくりとくるかもしれない。NPO法人こうのさとが、毎月第1・3水曜日と第4土曜日に開催している「みんなで畑活!」だ。4月のある日も、畑には老若男女様々な人が集まっていた。
畑の真ん中では子どもたちがカエルや虫を追いかけ、泥遊びを全力で楽しんでいる。それをみんなで見守りながら、畝を作ったり、草をむしったり、夏野菜の鉢上げ作業をしたりと汗を流す。
「安心安全な食を通じて、生まれてくる命を祝福し、人と人とのつながりを感じられるまちづくりをしたい」
そう語るのは、元看護師でこうのさと代表の片岡徹也さん。なぜ看護師だった彼が畑を耕しているのだろうか。
未来ある子どもたちをみつめて
片岡さんが看護師を志したきっかけは小学生の頃。カンボジアでNGOが活動している様子を学校で知り、国際協力に興味を持ったことだった。高校の時に先生に紹介され、看護の道へ進むことを決意。未来のある子どもたちが元気になれる小児科での勤務を選んだ。
やがて看護師として経験を積んだ片岡さんは、国際協力の道を目指し、JICA海外協力隊に応募し、南米グアテマラに派遣されることとなった。
片岡さんはグアテマラで、5歳未満の子どもの死亡率を下げるため、栄養改善などの啓発活動として村の母親たちに対し、栄養指導や家庭でできるケアなどの指導に取り組むこととなった。
ある日、一緒に活動をしていた村人のボランティアの1人に「近所に産まれた子どもが弱々しい状態なので一度見てみてほしい」と言われた。子どもは未熟児で、家庭ではどうにもできない状態だった為、片岡さんはすぐに病院に連れて行ったほうがよいと家族に伝えたが、家族がその赤ちゃんを病院に連れていくことはなかった。
その家族は先住民族。お金の問題だけでなく、父親が病院に連れていくことを良しとせず、また公用語であるスペイン語が話せないという問題もあった。母親はこれまでに10人の子どもを産んでいたが、その時生きていた子どもたちは6人。健康教育の大切さを痛感した。
日本だったら、ありえない!
一方で、グアテマラでは当時様々なワクチンの支援を受けていた。もちろん、それで防げる病気もあるのだが、グアテマラの子どもの死因は、下痢による脱水症状や低栄養、風邪をこじらせて肺炎になるなど、生活環境などを改善することができれば防げるものが多かった。にもかかわらず、医師は目の前の患者の治療よりも支援で届くワクチンを打つことを優先することもあった。
片岡さんはもどかしい気持ちになりながらも、「元気に暮らすことにフォーカスをあてたい!」という気持ちで活動をつづけた。やがて、村で健康祭りを開けば、多くの人が「元気に生きること」に興味津々で参加してくれるようになった。