高知県在住のイラストレーター兼絵本作家、柴田ケイコさん。発売わずか1年3か月で累計40万部を売り上げた大人気の絵本シリーズ「パンどろぼう」の生みの親でもあります。
今回は、7月26日まで香川県高松市で展示会を開催している柴田さんに、イラストから絵本の世界に飛び込んだきっかけや、絵本制作のこだわりについて尋ねました。
絵本の世界に飛び込んだきっかけは、わが子の弱視
柴田さんは、子どもが3歳のころに弱視が判明し、本人が眼鏡に対してどういう思いを抱くのか不安だったといいます。そこで誕生したのが最初の絵本「めがねこ」でした。
帯には「世界中のめがねさんにささぐ めがねはかっこいいのだ!」のメッセージ。眼鏡をかける子どもたちとその保護者に届けたいメッセージを込めたといいます。
その愛くるしいキャラクターから、グッズも大人気。眼鏡をかけた猫「めがねこ」は、眼鏡をかけた人にも、かけていない人にも愛されるキャラクターに成長しています。
読むことが楽しくなる本に
「めがねこ」に始まり、大人気の「パンどろぼう」シリーズなど、数々の絵本を手掛けている柴田さんですが、どの絵本を制作するにおいても大切にしていることがあるといいます。
その1つ目は、言葉のリズム等も考えて、“読むことが楽しくなる”文になるよう心掛けること。小学校の読み聞かせボランティアとして働いていた経験が生きているといいます。
「親が子に読み聞かせをするのは、子育ての中に1つ2つ入ってくると思うんです。その中で、読み聞かせ本として選んでほしい気持ちがあるし、読み聞かせを楽しんでほしいという思いもあります。だからこそ読みやすい本にしたいなって。そして読み聞かせが、親子のコミュニケーションにもつながればいいなと思います」
子どもは文字で読むだけで終わらない
もう1つの大切にしていることが、“視覚的に楽しめる”ことです。
「子どもって意外と文字は読まず、絵で見るんですよね。読み聞かせて終わったらそれで終わりじゃなくて、絵を見て楽しめるように、本の中に仕掛けをいれています。例えば何かが隠れているとか……細かいところまで見るから、手が抜けない。パンどろぼうシリーズにもいくつか仕掛けがありますよ。それを見つけて親子や友達で会話が生まれたら、うれしいですね」
子どもたちの好奇心を刺激する仕掛けができるのも絵本の醍醐味だと話す柴田さん。手掛ける作品は、「読むだけで終わらない本」としてこれからも、たくさんの人を楽しませてくれるに違いありません。
柴田さんの展示会は7月26日まで、香川県高松市のギャラリー「デザインラボラトリー蒼」で開かれています。「めがねこ」や「パンどろぼう」の原画をはじめ、柴田さんが手掛けた様々な作品が飾られています。