新型コロナウイルス感染拡大防止のため、自由に出歩けなくなって早1年が経ちました。コロナ禍の前までは開催されていたイベントの多くが中止になり、みんなで集まることも少なくなりました。そんな最中の2021年2月、岡山県奈義町で新たなイベントの実行委員会が立ち上がりました。
人と関わる機会が少ないからこそ
その名も、マルシェdeてらす実行委員会。メンバーは、2020年度に町内で実施された「チャレンジ応援セミナー」に参加していたお母さんたちです。
セミナーでは、小商いやキッチンカー、マルシェなどの、自分のやりたいことをどのように実践してきたかなどについて、講師の話を聞いてきました。
「何か新しいことにチャレンジしたい」
皆がそんな思いをもって、家事や育児、仕事の合間をぬって参加していました。そして、約5回にわたるセミナーが終わった頃、参加者から「奈義町でもマルシェがしたいね」という声が上がりました。
「マルシェdeてらす」開催に込めた思い
会場は、2019年春にオープンした「多世代交流広場ナギテラス」。観光案内所、バスの待合所のほか、勉強や作業に使えるフリースペースやギャラリーとしても利用可能なレンタルスペース等があり、地元の大人や子どもたち、観光客、町内外の人たちが集い、憩える空間です。ここでマルシェが開催されるのは、今回が初めてです。
打合せでは「いろんな世代の人が集まるといいよね」「子どもたちがお店を出してもおもしろいかも」「人と人がつながるイベントにしたいね」「『みんなの庭』で子どもたちが遊べるように、あの空間は開けておこう」などと、さまざまな意見が出てきます。また、コロナ禍での開催ということもあり、感染予防対策についての話し合いも行われました。
「マルシェdeてらす」という名前は、ナギテラスを会場にすること、奈義町やそこに暮らす人に光を当てるという思いを込めて命名されました。
メンバーの1人で、奈義町内でCPサロンをしている長畑みゆきさんは「コロナ禍で、なかなかイベントなどができないけど、町内だけでなく町外の人たちにも寄ってもらいたいなと思っています。奈義町は鳥取までの通過地点になりがちだけど、今回のマルシェをきっかけに、奈義町やナギテラスに立ち寄ってもらい、子どもも大人もいろいろな人がワイワイ寄ってくれる場所にしたいな」と話していました。
また、実行委員会の代表、Wood Berry 農園の山田憲史さんは
「コロナの影響で、さまざまなイベントが中止となり、人々との交流がなくなって改めて、人と人をつなげるこのようなイベントの役割の重要性を感じました。また、奈義町で育てている野菜について、直接自分の思いも伝えられたらいいなと思い、今回運営に携わることにしました。コロナでなかなか人と関わる機会が少ないからこそ、今までの関わり以外の人とも関わり、人の輪を広げていきたいです」と語りました。
ゆるやかに温かい時間が流れたマルシェ当日
4月24日のマルシェ当日は、焼菓子やベーグル、カレー、野菜、コーヒーの販売に加えて、親子連れで参加できるように絵本の読み聞かせ、端材を使ったワークショップ、子ども服のフリーマーケットやハンドマッサージなど、10店が出店。そのうち7店が、企画運営に携わる実行委員のメンバーでした。また、各店舗には、たくさんの子どもの姿がありました。
また、会場では、地元ミュージシャンの延原健太さんがナギテラスのオリジナルソングを披露しました。
延原さんは歌の歌詞を交えながら、オリジナルソングを作った理由を教えてくれました。
「コロナが流行し、自由に外出ができなかった頃、ギターをもって、子どもたちと一緒にナギテラスに遊びにきていました。子どもたちと一緒に歌を歌いながら、改めて人とのつながりの大切さを実感し、このナギテラスが人と人がつながる場所であってほしい、ここにくる人がひとつの歌を歌って、人がつながっていくといいなという思いを込めて歌をつくりました。ナギテラスが人と人のつながる出発点になればと。歌詞にもあるように、『目と目を合わせなきゃ 言葉を交わさなきゃ 気づけなかった ありふれていたもの』がたくさんあると思います。『つながりこそ明日を照らす ここに集う人たちから広がる笑顔を夢見て』います」
大好きな奈義町にたくさんの人に足を運んでもらえるマルシェ、足を運んでくれる人や地域が明るく照らされるマルシェ、みんながつながるマルシェ、自分たちだけでなく参加者や子どもも楽しめるマルシェ。実行委員のメンバーそれぞれの温かい思いが、さまざまなところで形となって表れていました。
今回はプレ実施ということでしたが、出会いの場や、新たな地元の魅力発見につながればと、次回の「マルシェdeてらす」の話し合いも今後進んでいくそうです。