コロナ禍のため、多くのイベントの運営者が中止・延期の判断に悩んだり、知恵を働かせたりしています。そんな中「コロナの今だからこそ、デジタル化でできることはあるはずだ」と語るのは、アプリやウェブなどデジタルにかかわる支援事業を展開する、フラーの社長・山﨑将司さん。デザイナーとしての経験を社長業にも活かしつつ、アプリケーション開発にも携わっていて、新潟県長岡市の夏の風物詩「長岡花火」の公式アプリ開発では、リーダーを務めました。そんな山﨑さんに、デジタルでイベントを支えるやりがいや、アプリをつくる際に大切にしていることについて尋ねました。
地元の人たちに愛される“長岡花火”の公式アプリ
新潟県長岡市で毎年8月2日と3日に開催される、長岡花火。戦後復興への思いや慰霊の念を込めて打ち上げられている、地元の人たちには思い入れの深い花火大会です。打ち上げ数は2日間合計で約20,000発。日本三大花火の1つに数えられています。
2017年に運用が始まった長岡花火の公式アプリは、去年の渋滞情報、歴史の紹介、ネットにつながなくても見られるコンテンツなど、機能が充実しています。毎年新しい機能が追加され、アップデートを重ねています。2020年の大会が中止になってしまった際も、2021年の大会日までのカウントダウン画面表示を掲載。楽しみにしていた人たちの心に寄り添う姿勢が伺えます。
「アプリだけではなく“花火大会”を成功させたかった」
「そもそも、何のためにアプリを作るのか?」山﨑さんはアプリを開発する際、ここを原点にしています。「状況によっては、目的達成のためにアプリが必要かどうか、もしかして必要ないのではないか、という判断を下すこともあるほどです」
新潟出身の山﨑さんが、地元で有名な長岡花火の公式アプリを開発するにあたって重視したのは、「アプリだけでなく、花火を成功させたい」という思いでした。機能だけに注目するのではなく、花火に携わる人たちの思いやドラマティックな場面、大会の歴史にも着目し、開発に組み込んでいます。
このアプリには、画面の色が切り替わる「なないろライト」という機能が備わってます。これは観客が花火師さんに“ありがとう”を伝えるためのもの。花火大会の終盤、大勢の観客は「なないろライト」を起動させ、感謝の意を込めて一斉にスマホを振るのです。
「このシーンは鳥肌もの。イベントアプリ開発という仕事の成果を、肉眼で見ることができて、本当に嬉しかったです。この瞬間のために仕事をしているんだとも思いました」
「いいアプリを作るためには、ただアプリを作るだけでなく、地元の人たちとの交流が欠かせません」
アプリ開発だけに留まらず、大会当日には現地の清掃活動を行うなど、人と人との繋がりを大切にする姿勢を、山﨑さんは崩しません。現場に立つからこそ見える「素顔」も、大切な魅力なのだと語ります。
今だからこそ、デジタル化でできること
新潟県十日町市・津南町を舞台にした3年に1度の国際芸術祭(※)「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」。フラーは今、この芸術祭の公式アプリを開発中で、6月頃に公開する予定です。アプリ利用者の体調チェックリストや現地での感染対策に向けた注意ポイントなどの感染対策コンテンツや、越後妻有の自然、風土、食、人など地域の魅力に触れることができる仕掛けが組み込まれています。
(https://www.echigo-tsumari.jp/news/20210416_01/)
「コロナの今だからこそ、デジタル化でできることは必ずあるはず。来訪者や出迎える地域の方々にとって、これまで以上に安全・安心な大地の芸術祭としたいです」長岡花火のアプリで得た経験を、次は大地の芸術祭への感動に繋げたい。「ウィズコロナだから“こそ”デジタルでできることを」と山﨑さんの挑戦は続きます。