「オトナになっても小粋なロマンスを!」を掲げて、関西を拠点にラヴァーズ・ロック(※)を奏でるBagus!(バグース)。昨年8月には、シングル「チークタイム」を発売し、日本で唯一のアナログレコードメーカー・東洋化成のアナログ盤リリース企画「CITY POP on VINYL 2020」にも取り上げられました。
大瀧詠一、吉田美奈子らそうそうたる面々に肩を並べる格好になった彼らは、コロナ禍をものともせず、ミニアルバム「恋はうたかた」もリリース。熱心な音楽ファンの間で、静かな話題を呼んでいます。
「変わること。環境変化はできるだけポジティブにとらえて」
ほぼすべての楽曲で、作詞・作曲を手がけるグループの中心人物・白川大晃さんの言葉の端々に感じられたのは、難しい時代に置かれた私たちが日々を前向きに過ごすヒントでした。
※ラヴァーズ・ロック/1970年代のイギリスにおいて、レゲエから派生する形で生まれた音楽ジャンル。レゲエのリズムを基調に、恋愛に主題を置いた歌詞が歌われる。
和歌山出身のメンバーが中心になり、2014年に結成。当初はサーフ・ミュージックやフォークに根差したサウンドを志向していたが、徐々に音楽性を変えて踊れる音楽、すなわちラヴァーズ・ロックを演奏するようになった。メンバーは白川大晃(Vo/Gt)、辻敦子(Vo/Key)、小西誠(Gt)、酒井裕介(Gt・サポート)、田辺弘一郎(Ba・サポート)、伊藤拓史(Dr・サポート)の6人。
こんなときだからこそできた、メンバーの強みの再確認
白川さん自身も「当たり前になっていた」と語るように、長らく精力的にライブ活動を展開していたBagus!。京都の老舗・磔磔でワンマンライブを開けるまでにグループは成熟していましたが、世界的な疫病の蔓延は当然、彼らをステージから遠ざけることになりました。しかし、意外にもメンバーは悲観的にはならなかったそうです。
「『なんのためにライブすんねん』みたいなことは意外と考えてなかったから、問い直しになった気がする」
「問い直し」が実を結んだものの代表格が、「Lovers From Home」と題された宅録企画。メンバーそれぞれが完全リモートで担当パートの録音を行い、ギタリストの小西誠さんがひとつの曲にまとめ上げるという工程を踏んで、ステイホームを象徴するような楽曲群が世に送り出されたのです。
2020年の大晦日にはシリーズ最終作となる「思い出の引き出し」をリリース。長年、ライブで披露されてきた定番曲から書き下ろしまで、Bagus!の新たなチャレンジが完結しました。
「ほんまにお遊びの宅録をしたことはあったけど、ちゃんとしたものをつくったことはなかったから。新しいことにチャレンジすることによって『自分、こんなことできんのや』って気づくことはあったかな」
「みんなのスキルも見えたから、チームでこの人のこういうとこ、活かそうみたいな」
一つひとつのトラックから、メンバーの個性や強みが再確認できたという白川さん。それまでは目を向けてこなかった本格的な制作活動に目を向けた結果、「コーディネーター」「おしゃれ担当」など、各人の「守備位置」はより鮮明なものに変わり、チームとしての結びつきはコロナ以前より堅固なものになるのでした。