近年、全国的に増加している「耕作放棄地」。
農林水産省が5年に1度行っている「荒廃農地の発生・解消状況に関する調査」によると、2015年で全国に約42.3万haもあるとされています。
そんな耕作放棄地が増えることで荒れていく地元の景観をなんとかしたいと立ち上がった平均年齢71歳の農業グループが、岡山県浅口市にいます。
耕作放棄地を借り上げ 野菜を共同生産
岡山県浅口市金光町須恵(すえ)の農家が集まり、2018年に結成された「スエ吉ファーマーズ」。メンバーは11人で、平均年齢71歳、最高齢は85歳です。
浅口市の市民提案型協働事業に応募して得た補助金で、耕作されなくなった農地を約4000㎡借りて、共同で野菜の生産を始めました。
高齢のメンバーが多いため、無理なく続けられるよう、植え付けから収穫まで手がかからないニンニク、ショウガ、サツマイモ、そら豆を中心に栽培しています。作った野菜は、地域で開催されるイベントのほか、地元のレストランなどでも販売しています。
高齢者を元気にしたい、景観を守りたい
「地域の高齢化がどんどん進んでいくので、何とか地域の高齢者を元気にしたいと思ってメンバーに声をかけました」そう話すのは、発起人の一人で現在の代表の定金宏忠さん。
兵庫県でサラリーマンとして働いていましたが、60歳手前で地元岡山に転勤、定年退職後に家業を継ぐ形で農業を始めました。子どもの頃は桃の一大産地だったという金光町も、今では桃農家は数えるほどだといいます。
「耕作されない土地がどんどん増えて、このままだと見る影もなくなってしまう。荒れ地は見たくない。この地区の景観を保ちたい。」活動には、地元を元気にしたいという定金さんの思いがつまっています。
地元の高校生ともコラボ
スエ吉ファーマーズは、「地元で採れる野菜のおいしさをもっと知ってほしい」と地域の高校にも呼び掛け、一緒に野菜の販売やレシピ作成をする取り組みも行っています。
10月25日には、金光学園高校の2年生6人と一緒に、地元で開かれたマルシェに参加しました。販売は高校生が行い、お客さんに聞かれてわからないことがあれば、傍に待機しているスエ吉ファーマーズのメンバーがサポートします。子どもにも野菜に親しんでもらおうと、高校生がイラスト入りで紹介した野菜レシピはとても好評でした。
マルシェで販売していたサツマイモ、実は当日の朝、畑で生徒たちが収穫したものでした。くわを持つのは生まれて初めてという生徒たち、定金さんらのアドバイスを受けて次々に芋を掘り起こしていました。
スエ長く活動を続け、次の世代につなぐ
活動を継続させていくために、スエ吉ファーマーズでは特産品の開発や草刈りの請負など、独自で収益を得る仕組みや、メンバー以外の高齢者にも軽作業を依頼するなど様々な取り組みを検討しています。今年からは、浅口市の若手農家と連携を深めていくため、意見交換会も始めています。
「地元の景観は自分たちで守りたい」という一心で、農業を通じて地域の未来のために奮闘しています。